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蕾
「蕾〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蕾の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「早春」より 著者:芥川竜之介
い。が、両大師前《りょうだいしまえ》にある木などは曇天を透《す》かせた枝々に赤い
蕾《つぼみ》を綴《つづ》っている。こういう公園を散歩するのは三重子とどこかへ出か....
「星座」より 著者:有島武郎
っていた。彼の空想の魔杖の一振りに、真白な百合《ゆり》のような大きな花がみるみる
蕾《つぼみ》の弱々しさから日輪のようにかがやかしく開いた。清逸は香りの高い蕊《し....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
|一枝折って来てさし芽にしたのが、次第に丈たかく生立ちはしたが、葉ばかり茂って、
蕾を持たない。丁ど十年目に、一昨年の卯月の末にはじめて咲いた。それも塀を高く越し....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
喰わせる禁厭ですかね。」 「はい、お禁厭でございます。」 と云った目のふちに、
蕾のような微笑を含んでいたから。 「は、は、は、串戯でしょう。」 「菅子さんに聞....
「三角形の恐怖」より 著者:海野十三
いにこんなにデクデク肥っちゃいませんが、中肉中背という奴で頬っぺたも赤くて、桜の
蕾かなんぞのように少しふくらんでいましたよ。亡くなった姉のお友達に電車の中なぞで....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
ぶのだった。一家の誰の眼も、にこやかに耀き、床の間に投げ入れた、八重桜が重たげな
蕾を、静かに解いていた。まことに和やかな春の宵だった。 そこへ絹ずれの音も高く....
「ゴールデン・バット事件」より 著者:海野十三
きながら、その少女のことを胸に描いていたところだったので、ハッとした。あの薔薇の
蕾のように愛らしい少女を、帆村に紹介かたがた引張りだした今夜の仕儀だった。それは....
「疑問の金塊」より 著者:海野十三
て? よし、開けてみろ」 山城刑事は懐中電灯をパッと差しつけた。屍体の右手は、
蕾のように固く、指を折り曲げていた。折井刑事はウンウン云いながら、それを小指の方....
「太平洋雷撃戦隊」より 著者:海野十三
に、警戒をしあっています。 この五隻の○号潜水艦が、横須賀軍港を出たのは、桜の
蕾がほころびそうな昭和○年四月初めでありました。それからこっちへ、もう一月ちかい....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
が、可懐い亡き母の乳房の輪線の面影した。 「まあ、これからという、……女にしても
蕾のいま、どうして死のうなんてしたんですよ。――私に……私……ええ、それが私に恥....
「古狢」より 著者:泉鏡花
、片手で外套の膝を叩いた。 「お手柄、お手柄。」 土間はたちまち春になり、花の
蕾の一輪を、朧夜にすかすごとく、お町の唇をビイルで撓めて、飲むほどに、蓮池のむか....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
了いました……。それからの私はただ一|個の魂の脱けた生きた骸……丁度蝕まれた花の
蕾のしぼむように、次第に元気を失って、二十五の春に、さびしくポタリと地面に落ちて....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
のような板敷へ出ましたから。……鵯が南天燭の実、山雀が胡桃ですか、いっそ鶯が梅の
蕾をこぼしたのなら知らない事――草稿持込で食っている人間が煮豆を転がす様子では、....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
いらしく、すいすいと藺が伸びて、その真青な蔭に、昼見る蛍の朱の映るのは紅羅の花の
蕾です。本屋続きの濡縁に添って、小さな杜若の咲いた姿が、白く光る雲の下に、明く、....
「あの顔」より 著者:大倉燁子
いつかそれが赤ン坊でなくほんものの妾の顔に見えたりして、この眼で夫を惑わせたか、
蕾のような赤い唇を見ると、夫の心を吸い寄せた憎い唇――と、思わず口尻を捻り上げて....