薄明り[語句情報] » 薄明り

「薄明り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

薄明りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
返って見れば、彼を苦しめた中学の校舎は寧《むし》ろ美しい薔薇色《ばらいろ》をした薄明りの中に横《よこた》わっている。尤《もっと》もグラウンドのポプラアだけは不相....
疑惑」より 著者:芥川竜之介
「それだ。それだ。」と囁くような心もちさえ致します。私はまだ火をともさない店先の薄明りで、慌《あわただ》しく表紙をはぐって見ました。するとまっ先に一家の老若《ろ....
大川の水」より 著者:芥川竜之介
のではない。 ことに日暮れ、川の上に立ちこめる水蒸気と、しだいに暗くなる夕空の薄明りとは、この大川の水をして、ほとんど、比喩《ひゆ》を絶した、微妙な色調を帯ば....
青年と死」より 著者:芥川竜之介
× 女が大勢裸ですわったり、立ったり、ねころんだりしている。薄明り。 ――まだ今夜は来ないのね。 ――もう月もかくれてしまったわ。 ....
少年」より 著者:芥川竜之介
っているのはそれ自身大きい石鹸玉である。夢のようにどこからか漂《ただよ》って来た薄明りの中の石鹸玉である。 「あのぼんやりしているのはレンズのピントを合せさえす....
妖婆」より 著者:芥川竜之介
青光りのする翅と翅とがもつれ合ったと思う間もなく、蝶は二羽とも風になぐれて、まだ薄明りの残っている電柱の根元で消えたそうです。 ですからその石河岸の前をぶらぶ....
或る女」より 著者:有島武郎
気にはなれなかった。電気もまだ来ていないのでつやにその手紙を読ませてみた。つやは薄明りにすかしすかし読みにくそうに文字を拾った。 「あなたが手術のために入院な....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
だて――旦那。」 藤助は息継に呷と煽って、 「この二階から、鏡台山を――(少し薄明りが映しますぜ、月が出ましょう。まあ、御緩りなさいまし、)――それ、こうやっ....
第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
が板戸になる。……そこが細目にあいた中に、月影かと見えたのは、廂に釣った箱燈寵の薄明りで、植込を濃く、むこうへぼかして薄りと青い蚊帳。 ト顔を見合せた。 急....
縷紅新草」より 著者:泉鏡花
れこれ三十年。……だもの、記憶も何も朧々とした中に、その悲しいうつくしい人の姿に薄明りがさして見える。遠くなったり、近くなったり、途中で消えたり、目先へ出たり―....
沼夫人」より 著者:泉鏡花
脊伸で覗いた奴。 かとも思ったが、どちらを視めても、何も居らず、どこに窓らしい薄明りも射さなければ、一間開放した筈の、帷の戦ぎも見えぬ。 カタリとも言わず…....
星女郎」より 著者:泉鏡花
ら、この屋造の様子を聞いて下さい。 で座敷々々には、ずらり板縁が続いているのが薄明りで見えました。それは戸外からも見える……崖へ向けて、雨戸を開けた処があった....
トロッコ」より 著者:芥川竜之介
。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色の麦藁帽、――しかしその記憶さえも、年毎に色彩は....
久保田万太郎氏」より 著者:芥川竜之介
は久保田君の生活と共にこの特色を示すものと云うべし。久保田君の主人公は常に道徳的薄明りに住する閭巷無名の男女なり。是等の男女はチエホフの作中にも屡その面を現せど....
久米正雄」より 著者:芥川竜之介
……新しき時代の浪曼主義者は三汀久米正雄である。「涙は理智の薄明り、感情の灯し火」とうたえる久米、真白草花の涼しげなるにも、よき人の面影を忘....