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薄暮
「薄暮〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄暮の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「尾生の信」より 著者:芥川竜之介
、ただ、何か来《きた》るべき不可思議なものばかりを待っている。ちょうどあの尾生が
薄暮《はくぼ》の橋の下で、永久に来ない恋人をいつまでも待ち暮したように。
(大正八年十二月)....
「開化の良人」より 著者:芥川竜之介
皮の椅子《いす》を離れながら、無言のまま、彼と握手を交して、それからこの秘密臭い
薄暮《はくぼ》の書斎を更にうす暗い外の廊下へ、そっと独りで退きました。すると思い....
「河童」より 著者:芥川竜之介
れどもこは幸いにも多忙なる諸君の関するところにあらず。今やわが心霊界はおもむろに
薄暮に沈まんとす。予は諸君と訣別《けつべつ》すべし。さらば。諸君。さらば。わが善....
「片恋」より 著者:芥川竜之介
々の連中に片恋をした事があるのかも知れない。
(二人の乗っていた電車は、この時、
薄暮《はくぼ》の新橋停車場へ着いた。)
(大正六年九月十七日)....
「松江印象記」より 著者:芥川竜之介
としていた一事は自分をしていよいよ深くこれらの橋梁を愛せしめた。松江へ着いた日の
薄暮雨にぬれて光る大橋の擬宝珠を、灰色を帯びた緑の水の上に望みえたなつかしさは事....
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
める。自分はひとり、渡し船の舷に肘《ひじ》をついて、もう靄《もや》のおりかけた、
薄暮の川の水面《みのも》を、なんということもなく見渡しながら、その暗緑色の水のあ....
「るしへる」より 著者:芥川竜之介
S か。あるいは DS 以上の霊か」と。悪魔「るしへる」は、かくわが耳に囁きて、
薄暮《はくぼ》の空をふり仰ぐよと見えしが、その姿たちまち霧の如くうすくなりて、淡....
「侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
蟇《ひきがえる》の舌の色である。
鴉
わたしは或|雪霽《ゆきばれ》の
薄暮、隣の屋根に止まっていた、まっ青な鴉《からす》を見たことがある。
作....
「馬の脚」より 著者:芥川竜之介
。それは北京《ペキン》の柳や槐《えんじゅ》も黄ばんだ葉を落としはじめる十月のある
薄暮《はくぼ》である。常子は茶の間《ま》の長椅子にぼんやり追憶に沈んでいた。彼女....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
らともなく潮の香が来て、湿っぽく人を包む。蚊柱の声の様に聞こえて来るケルソン市の
薄暮のささやきと、大運搬船を引く小蒸汽の刻をきざむ様な響とが、私の胸の落ちつかな....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
の唄は?」 「極が悪うございますわ。……(太郎は米搗き、次郎は夕な、夕な。)……
薄暮合には、よけい沢山飛びますの。」 ……思出した。故郷の町は寂しく、時雨の晴....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
て渦を巻くと、其処の蘆は、裏を乱して、ぐるぐると舞うに連れて、穂綿が、はらはらと
薄暮あいを蒼く飛んだ。 (さっ、さっ、さっ、 しゅっ、しゅっ、しゅっ、 エイ....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
を担いで、ひょうろ、ひょろ。 ようやく石段の中ほどで、吻と息をして立った処が、
薄暮合の山の凄さ。……天秤かついだ己が形が、何でございますかね、天狗様の下男が清....
「トロッコ」より 著者:芥川竜之介
き当りの風景は、忽ち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来る。顔に当る
薄暮の風、足の下に躍るトロッコの動揺、――良平は殆ど有頂天になった。 しかしト....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
た、お絹の目が鯉の目より濡々としたのが記憶にある……といった見物で。――帰途は、
薄暮を、もみじより、花より、ただ落葉を鴨川へ渡したような――団栗橋――というのを....