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薄月
「薄月〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄月の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「鳥辺山心中」より 著者:岡本綺堂
六 素足で河原を踏んでゆく女の足は遅かった。お染は息を切って駈けた。
薄月と水明りとに照らされた河原には、二つの刀の影が水に跳《はね》る魚の背のように....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
」と、銀蔵はまた云った。 「なにしろ、もうちっと正体を見とどけよう」 ふたりは
薄月のひかりを頼りに、その黒い影のいかに動くかをうかがっていると、それは頬かむり....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
、なるたけ、葉の暗い中に隠したに違いない。もとより藁屑も綿片もあるのではないが、
薄月が映すともなしに、ぼっと、その仔雀の身に添って、霞のような気が籠って、包んで....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
雨戸を閉めて燈火のかげも洩れていなかった。霜曇りとも云いそうな夜の空で、弱々しい
薄月のひかりが庭の八つ手の葉を寒そうに照らしていた。 わたしは毎日、大抵明るい....
「紅玉」より 著者:泉鏡花
、同時に跪いて天を拝す。風一陣、灯消ゆ。舞台一時暗黒。) はじめ、月なし、この時
薄月出づ。舞台|明くなりて、貴夫人も少紳士も、三羽の烏も皆見えず。天幕あるのみ。....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
、爺どのの方へ背を向けて、顔をこう斜っかいに、」 と法師から打背く、と俤のその
薄月の、婦人の風情を思遣ればか、葦簀をはずれた日のかげりに、姥の頸が白かった。 ....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
の、屋根に、廂に、しばしば鴉が鳴いたのである。 次第に数が増すと、まざまざと、
薄月の曇った空に、嘴も翼も見えて、やがては、練ものの上を飛交わす。 列が道頓堀....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
見渡す限り、山はその戸帳のような色になった。が、やや艶やかに見えたのは雨が晴れた
薄月の影である。 遠くで梟が啼いた。 謙造は、その声に、額堂の絵を思出した、....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
う捨台辞を残して、我言かくのごとく違わじと、杖をもって土を打つこと三たびにして、
薄月の十日の宵の、十二社の池の周囲を弓なりに、飛ぶかとばかり走り去った、予言者の....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
た気勢、ぐいと引く、糸が張った。 滝太郎は早速に押当てていた唇を指から放すと、
薄月にきらりとしたのは、前に勇美子に望まれて、断乎として辞し去った指環である。と....
「探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
。薄い月がぼんやりと田圃路を照らして、どこかで蛙の声がきこえます。わたくしはその
薄月を頼りにして、一生懸命に与助のあとを付けて行きますと、与助は村はずれを流れて....
「人狼」より 著者:岡本綺堂
も早く来い、来い。 (源五郎は昭全を促して、下のかたの芦のなかに隠れる。水の音。
薄月の影。上のかたより弥三郎出づ。お妙はどうしようかと躊躇しているうちに、弥三郎....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
の屋形であったのを、去年から新しい主人に横領されたもので、庭の奥には大きい古池が
薄月の下に黒く淀んでいた。権右衛門は内の灯のとどかないところまでかれを連れ出して....
「遠野の奇聞」より 著者:泉鏡花
。笛の名人にて、夜通しに馬を追いて行く時などは、よく笛を吹きながら行きたり。ある
薄月夜にあまたの仲間の者と共に浜へ越ゆる境木峠を行くとて、また笛を取出して吹きす....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
じながら、舳を輪なりに辷らして中流で逆に戻して、一息ぐいと入れると、小波を打乱す
薄月に影あるものが近いて、やがて舷にすれすれになった。 飛下りて、胴の間に膝を....