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薄綿
「薄綿〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薄綿の前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「箕輪心中」より 著者:岡本綺堂
いたのである。もう一枚の紬《つむぎ》は奥様のお形見として頂戴したもので、いずれも
薄綿であった。 「女物ではござりますが、奥様のお形見でござります」と、彼女は外記....
「食魔」より 著者:岡本かの子
四郎のような生活の些末の事にまで、タイラントの棘が突出ている人間に取り、性抜きの
薄綿のような女は却って引懸り包まれ易い危険があったのだった。鼈四郎の世間に対する....
「足迹」より 著者:徳田秋声
十五 正雄がある朝十時ごろに、一の家を訪ねて行くと、お庄は半襟のかかった双子の
薄綿入れなどを着込んで、縁側へ幾個も真鍮の火鉢を持ち出して灰を振っていた。お庄が....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
とあわれに寂しく、貴女の声で聞えました。 その声が遠くなります、山の上を、
薄綿で包みますように、雲が白くかかりますと、音が先へ、颯あ――とたよりない雨が、....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
森を背中から離すと、邸構えの寂しい町も、桜の落葉に日が燃えて、梅の枝にほんのりと
薄綿の霧が薫る……百日紅の枯れながら、二つ三つ咲残ったのも、何となく思出の暑さを....
「わが父」より 著者:宮本百合子
の」 手を執られたまま私は椅子をまわって父の足もとにあった低い足台に腰かけた。
薄綿のどてらを着た父の膝に半ばもたれるように腕をおき、しばらく喋って私は、 「じ....
「別れたる妻に送る手紙」より 著者:近松秋江
七宝繋ぎを織り出した例のお召の羽織に矢張り之れもお召の沈んだ小豆色の派手な矢絣の
薄綿を着ていた。 深夜の、朧に霞んだ電灯の微光の下に、私は、それを、何も彼も美....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
艶《えん》な声がしてフワリと私の上に投《ほう》りこまれたものは、軽いフワフワした
薄綿のねんねこだった。多分帰りの夜風を用心して入れてきたものだろう。私はピョコン....
「武蔵野」より 著者:山田美妙
る。そのすこし前までは白菊を摺箔にした上衣を着ていたが、今はそれを脱いでただ蒲の
薄綿が透いて見える葛の衣物ばかりでいる。 これと対い合ッているのは四十前後の老....
「山の湯の旅」より 著者:上村松園
ど巓に近いところで、やはり湯宿があります。そこへ着くと、とにかく寒いので私は早速
薄綿のはいったドテラを借りまして、まず、座敷のまん中にごろりと横になり、そして肘....