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「薄衣〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

薄衣の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
青年」より 著者:森鴎外
ir!」の一声を残して、狭い横町を大股に歩み去る大村を、純一は暫く見送って、夕の薄衣に次第に包まれて行く街を、追分の方へ出た。点燈会社の人足が、踏台を片手に提げ....
海の使者」より 著者:泉鏡花
れる。自在に動く。……が、底ともなく、中ほどともなく、上面ともなく、一条、流れの薄衣を被いで、ふらふら、ふらふら、……斜に伸びて流るるかと思えば、むっくり真直に....
源氏物語」より 著者:紫式部
袖《そで》から出ていない。もう一人は顔を東向きにしていたからすっかり見えた。白い薄衣《うすもの》の単衣襲に淡藍《うすあい》色の小袿《こうちぎ》らしいものを引きか....
源氏物語」より 著者:紫式部
にも秘密な贈り物があった。ついでに空蝉《うつせみ》の脱殻《ぬけがら》と言った夏の薄衣《うすもの》も返してやった。 逢《あ》ふまでの形見ばかりと見しほどにひたす....
窓にさす影」より 著者:豊島与志雄
ちらりちらりと見られてるような気がした。祖母がふうわりと私を包んでくれていたその薄衣が、剥ぎ取られて、私の存在がはっきりしてき、暗がりの中にいた私が俄に脚光を浴....
潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
には、影のような微笑が横切った。それはごく薄い、やっと見えるか見えないぐらいの、薄衣のようなものだったが、しばし悲しい烙印の跡を、覆うているかのように見えた。 ....
血ぬられた懐刀」より 著者:国枝史郎
ああ妾はどうしたんだろう? こんな気持になったことは、それこそ産れて初めてだよ」薄衣の下で身もだえをした。桃色の薄衣が裸休に準じて、蠱惑的の襞を作っている。胸の....
アイヌ神謡集」より 著者:作者不詳
に お前そんな事をするなら,力競べをやろう.」 と云いながら上衣を脱いだ. 私も薄衣一枚になって 組み付いた.彼も私に組み付いた.それからは 互に下にしたり上に....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
した。 ある夜深更のことであった。おりから春の朧月が苑内の樹立や湖を照らし紗の薄衣でも纒ったように大体の景色を※たけて見せ、諸所に聳えている宮殿の窓から垂帳を....
だいこん」より 著者:久生十蘭
ないというわけなんですか。 蛙の料理というと、牛酪炒《ソテエ》、空揚《フリ》、薄衣揚《コットレット》、葡萄酒煮《シャッスウル》、ジェリ寄せ、ムニエル、ミラネェ....
鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
す。まさか天使でもないでしょうが、可愛らしい子供が、太った手足を出してしゃがみ、薄衣らしいものを頭から被って、その襞が形よく柔かに垂れている純白の美しいのもあり....
樹氷」より 著者:三好十郎
んじゃないのかしら? この間から毎日ウトウトしながらそう思って聞いているの。……薄衣を着た仙女たちがマジメくさった顔をして笛を吹いたり太鼓をたたいたりしているの....
活人形」より 著者:泉鏡花
、顔は太く蒼みて見ゆ。ただ屹としたる品格ありて眼の光凄まじく、頬の肉落ち頤細りて薄衣の上より肩の骨の、いたいたしげに顕われたるは世に在る人とは思われず。強き光に....
随筆 新平家」より 著者:吉川英治
まいている。ぼくらの立ったその日の条件もよかったのである。雨後の空から太陽が滝の薄衣を透して、うしろの巨大な岩壁へ、照明を局射しているように、水沫の光焔を描いて....
大岡越前」より 著者:吉川英治
と思うとそれから、ついと、蝙蝠のように、早足に、出て行った男の影がある。 黒い薄衣に、同じ薄ものの露頭巾をかぶり、大小をさし、草履ばきで、すたすたと行くうしろ....