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「薄陽〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

薄陽の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:海野十三
ん明るさが恢復していった。風もどこかへ行ってしまった。 やがてまたホンノリと、薄陽がさしてきた。彼はまだ身体一つ動かさず、破れた壁を見詰めていた。雨が上ったら....
狂乱」より 著者:近松秋江
気を出して向うの山裾の小山の字まで探ねて往った。十二月の初旬のころでところどころ薄陽の射している陰気な空から、ちらりちらり雪花が落ちて来た。それでも私は両手に重....
新版 放浪記」より 著者:林芙美子
けぐし》につきさしていた。竹串にさされた生鰯が、むしろの上にならんで、雨あがりの薄陽がその上に銀を散らしている。娘はバケツにいっぱい生鰯を入れてもらうとその辺の....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
。尼さんの一行。白衣の巴里ベネデクト教団。黒服の聖モウル派。ノウトルダムの高塔。薄陽。マルセイユ出帆。 錨を上げる。 ナポリまで四六二|浬。一日半の地中海だ....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
あっと音のするような感じで瞬く間に空がくもるのだ。そうすると向側の家を撫でていた薄陽がふっと影って、白い歩道の石に小さな黒点がまばらに散らばり出す。きょうも雨だ....
丹下左膳」より 著者:林不忘
いしゅう》山田、尾上《おのえ》町といえば目ぬきの大通りである。 弱々しい晩秋の薄陽がやがてむらさきに変わろうとするころおい、その街上《まち》なかに一団の人だか....
丹下左膳」より 著者:林不忘
まいである。 馬《うま》乗り袴《ばかま》が、さやさやと鳴る。 馬具がきしむ。薄陽《うすび》と河風を顔の正面《まとも》にうけて源三郎は、駒の足掻《あが》きを早....
田舎がえり」より 著者:林芙美子
った躑躅《つつじ》や、紅い桃、ぎんなんの木、紅葉、苔《こけ》の厚く敷いた植木鉢が薄陽《うすび》をあびて青々としていた。庭が狭いので、屋根の上に植木を置いて愉しむ....
放浪記(初出)」より 著者:林芙美子
を竹串につきさしていた。竹串にさゝれた生鰯が、兵隊のように並んだ上に、雨あがりの薄陽が銀を散らしていた。 娘は馬穴《ばけつ》にいっぱい生鰯を入れてもらうとその....
魔像」より 著者:林不忘
》り足である。見ようによっては、恐ろしく苦味《にがみ》走って見える横顔に、元日の薄陽《うすび》がちらちらと影を踊らせている。八|葉《よう》の剣輪違《けんわちが》....
海豹島」より 著者:久生十蘭
つづけた。 第五日 一、正午近くなると、避難所の窓からぼんやりと蒼白い薄陽がさしこんできて、澱んだように暗かった土間の片隅を照らしはじめた。久しぶりに....
犂氏の友情」より 著者:久生十蘭
いたようなようすもしない。それどころか、叙景的にいえば、雨雲の間からぼんやり秋の薄陽が洩《も》れて来るようなしんねりとした微笑が、色の褪めたような顔のうえに射し....
越後獅子」より 著者:羽志主水
いて来ても好いのに、此二三日の寒気《さむさ》は如何だ。今日も、午後《ひるすぎ》の薄陽の射してる内から、西北の空ッ風が、砂ッ埃を捲いて来ては、人の袖口や襟首《えり....
キャラコさん」より 著者:久生十蘭
を吼《ほ》え廻っていた。 午《ひる》過ぎになると、低く垂れさがった雨雲の間から薄陽《うすび》がもれはじめ、嵐はおいおいおさまったが海面《うなづら》はまだいち面....
釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
土間、狭いから一|眼《め》だ。古い道具やら空箱の類が積んである奥に、小窓を洩れる薄陽の縞を受けて二つ並んだ染料の大甕《おおがめ》、何を思ったか藤吉、転がるように....