薄鼠[語句情報] » 薄鼠

「薄鼠〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

薄鼠の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:徳田秋声
気受けのよいことを思わせた。 三十 客が帰ってしまうと、瀟洒な浴衣に薄鼠の兵児帯をぐるぐる捲きにして主が降りて来たが、何となく顔が冴え冴えしていた。....
姥捨」より 著者:太宰治
朝の四時である。まだ、暗かった。心配していた雪もたいてい消えていて、駅のもの蔭に薄鼠いろして静かにのこっているだけで、このぶんならば山上の谷川温泉まで歩いて行け....
花物語」より 著者:寺田寅彦
が歩いているが、世の人と思われぬ青白い顔の輪郭に月の光を受けて黙って歩いている。薄鼠色の着物の長くひいた裾にはやはり月見草が美しく染め出されていた。どうしてこん....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
のじゃあございません、ほんの前触れで、一きよめ白くしましたので、ぼっとほの白く、薄鼠に、梟の頂が暗夜に浮いて見えました。 苦しい時ばかりじゃあねえ。こんな時も....
縁結び」より 著者:泉鏡花
くさん咲く。それ、一面に。」 星の数ほど、はらはらと咲き乱れたが、森が暗く山が薄鼠になって濡れたから、しきりなく梟の声につけても、その紫の俤が、燐火のようで凄....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
ように目を注いだ。 「おや!」 「…………」 六 黒の唐繻子と、薄鼠に納戸がかった絹ちぢみに宝づくしの絞の入った、腹合せの帯を漏れた、水紅色の扱....
囚われ人」より 著者:豊島与志雄
面、つまり正夫を背後にして円卓の一端に、ぼんやりと人影が現われる。白髪の老女で、薄鼠色の和服を着ているが、全体がぼやけて形体は定かでない。――このあたりから、正....
白蛾」より 著者:豊島与志雄
を見張りました。いつもより濃く化粧をし、髪のカールを一筋乱れぬまでに梳かしつけ、薄鼠色の地に水色の井桁を散らした薄物をきりっとまとい、一重帯の帯締の翡翠の彫物を....
かくれんぼ」より 著者:斎藤緑雨
じもじと箸も取らずお銚子の代り目と出て行く後影を見澄まし洗濯はこの間と怪しげなる薄鼠色の栗のきんとんを一ツ頬張ったるが関の山、梯子段を登り来る足音の早いに驚いて....
高原の太陽」より 著者:岡本かの子
年の姿は、美しかった。薩摩絣の着物に対の羽織を着て、襦袢の襟が芝居の子役のように薄鼠色の羽二重だった。鋭く敏感を示す高い鼻以外は、女らしい眼鼻立ちで、もしこれに....
白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
おいそれものの女中めが、のっけのその京言葉と、朱鷺色の手絡、艶々した円髷、藤紫に薄鼠のかかった小袖の褄へ、青柳をしっとりと、色の蝶が緑を透いて、抜けて、ひらひら....
チベット旅行記」より 著者:河口慧海
のように飜んで居ます。その切々の間から折々月影が朦朧と見えますが、その色は物凄き薄鼠色を現わして見るからがヒマラヤの凄絶、愴絶なる光景はかくもあるべきかと自ら驚....
」より 著者:神西清
人きりで、これはまったく取るに足らぬ人物である。この小さな几帳面な七十婆さんは、薄鼠色の服を着こんで、白い飾りリボンのついた頭巾をかぶり、一見陶器人形といった姿....
粉雪」より 著者:中谷宇吉郎
感じの日が多い。風の無い夕方から小形の牡丹雪が降り始める日など、遠くの山も人家も薄鼠色に消えて行くのを背景に、真っ白く音も無く積もって行く。そのうちに一陣の風が....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
える、あのカムチャッカ蘭の窓が。 雨は霽りかけたが、まだ露人の家のあたりの空は薄鼠色にうち湿っていた。いや、もう日が暮れかけても来ていた。 「や、来た来た。」....