»
薹
「薹〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
薹の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
こう云うと、実際つまらなそうな顔をしながら、どこかで摘んで来たらしい蕗《ふき》の
薹《とう》の※《におい》を嗅《か》ぎ始めた。
十二
素戔嗚《すさのお》はし....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
なげえやつだな。春さきゃ啖呵《たんか》がじきに腐るんだ。かけてえ慈悲にも、じきに
薹《とう》がたつんだ。世を忍ぶもこの位牌ゆえ、人を切ったもこの位牌ゆえ、――すな....
「守の家」より 著者:伊藤左千夫
るような家であった。三時頃の薄い日影が庭半分にさしていて、梅の下には蕗《ふき》の
薹《とう》が丈高くのびて白い花が見えた。庭はまだ片づいていてそんなに汚くなかった....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
いう子は、なぜいつまでも独りでいるんですね。いい子だけれども、惜しいことにちっと
薹《とう》が立ってしまいましたね」 「そうでございますよ」 利兵衛も顔をしかめ....
「春の潮」より 著者:伊藤左千夫
恋話も、新しい話に入りかわってしまった。 六 珊瑚樹垣の根には蕗の
薹が無邪気に伸びて花を咲きかけている。外の小川にはところどころ隈取りを作って芹生....
「食魔」より 著者:岡本かの子
縮めた形である。しかし胴の肥り方の可憐で、貴重品の感じがするところは、譬えば蕗の
薹といったような、草の芽株に属するたちの品かともおもえる。 笊の目から※った蔬....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
まに開いていた。 四辺は明るくて華やかで、万物が生々と呼吸づいていた。 蕗の
薹は土を破り、紫の菫は匂いを発し、蒲公英の花は手を開き、桜草は蜂を呼んでいた。 ....
「温泉」より 著者:梶井基次郎
いか。森林の伐採。杉苗の植付。夏の蔓切。枯萱を刈って山を焼く。春になると蕨。蕗の
薹。夏になると溪を鮎がのぼって来る。彼らはいちはやく水中眼鏡と鉤針を用意する。瀬....
「不尽の高根」より 著者:小島烏水
盛りの中に、どうかすると、北向きに固く結んだつぼみが見える。つぼみと、それを包む
薹とは、赤と白とを市松格子形に互層にして、御供物の菓子のように盛り上っている。花....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
桜も、あるいは満開に、あるいは初々しい花に、色香を装っている。石垣の草には、蕗の
薹も萌えていよう。特に桃の花を真先に挙げたのは、むかしこの一廓は桃の組といった組....
「塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
から真黒でどうも」 杢「誠に恥かしいが、これに居るのは私の娘で、年は廿一に成って
薹に立って、誠に良い縁がありませんが、あの炭屋さんを見て嫁に往きたいと云い、私も....
「役者の一生」より 著者:折口信夫
その自信の強い東京の見物も、是だけは文句なしに参ったのである。尤、最近の娘形は、
薹が立つ以上にすさまじいものになってしまったけれども。 これほど美しい女形は大阪....
「雪代山女魚」より 著者:佐藤垢石
一 奥山の仙水に、山女魚を釣るほんとうの季節がきた。 早春、崖の南側の陽だまりに、蕗の
薹が立つ頃になると、渓間の佳饌山女魚は、俄に食趣をそそるのである。その濃淡な味感....
「贋物」より 著者:葛西善蔵
田舎唄に聴惚れた。そして周囲のもの珍しさから、午後は耕太郎を伴れて散歩した。蕗の
薹がそこらじゅうに出ていた。裏の崖から田圃に下りて鉄道線路を越えて、遠く川の辺ま....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
部分が、時と事情により、われ知らず表面へ覗き出て来ます。 ほろ苦き中に味あり蕗の
薹 この句は父性愛の譬えとして好適の句だと思います。 兄弟というものは、本当....