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虫の音
「虫の音〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
虫の音の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い：新字新仮名]
「影」より 著者:芥川竜之介
、それは彼自身にもはっきりしない。ただそこに佇《たたず》んだまま、乏《とぼ》しい
虫の音《ね》に聞き入っていると、自然と涙が彼の頬へ、冷やかに流れ始めたのである。....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
森も笠井も去ってしまった。
水を打ったような夜の涼しさと静かさとの中にかすかな
虫の音がしていた。仁右衛門は何という事なしに妻が癪《しゃく》にさわってたまらなか....
「溺れかけた兄妹」より 著者:有島武郎
丁度昼少し過ぎで、上天気で、空には雲一つありませんでした。昼間でも草の中にはもう
虫の音《ね》がしていましたが、それでも砂は熱くって、裸足《はだし》だと時々草の上....
「星座」より 著者:有島武郎
に、紫に、からからに乾いて蝕まれた野葡萄《のぶどう》の葉と、枯｜蓬《よもぎ》とが
虫の音も絶えはてた地面の上に干からびて縦横に折り重なっていた。常住｜湿《しめ》り....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
緒を締め直しながらささやいた。「きのうの夕暮れじゃ。衣笠どのが端《はし》近う出て
虫の音に聞き惚れていらるると、庭の秋草の茂みから煙りのように物の影があらわれた。....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
。 過日何と言いました。あの合歓の花が記念だから、夜中にあすこへ忍んで行く――
虫の音や、蛙の声を聞きながら用水越に立っていて、貴女があの黒塀の中から、こう、扱....
「海異記」より 著者:泉鏡花
浪の音には馴れた身も、鶏の音に驚きて、児と添臥の夢を破り、門引きあけて隈なき月に
虫の音の集くにつけ、夫恋しき夜半の頃、寝衣に露を置く事あり。もみじのような手を胸....
「第四次元の男」より 著者:海野十三
たいところであるが、生憎そんなものは用意がしてなくて、唯聞えるは、草の根にすだく
虫の音ばかり、とたんに月は雲間を出でて、月光は水のように流れ、くぬぎ林はほのぼの....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
、小次郎法師は、生れて以来、聞いただけの、風と水と、鐘の音、楽、あらゆる人の声、
虫の音、木の葉の囁きまで、稲妻のごとく胸の裡に繰返し、なおかつ覚えただけの経文を....
「探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
そよと流れて、縁の柱にはどこから飛んで来たか機織虫が一匹鳴いていた。深田君はその
虫の音を感に堪えたように聞いていたが、やがて一人で庭に降りた。なにか少し面白くな....
「北斗帖」より 著者:違星北斗
も ウタリー思いて泣いてありけり ウタリーは同胞 ほろ／＼と鳴く
虫の音はウタリーを 思いて泣ける我にしあらぬか ガッチャキの薬を売ったその金で ....
「或る秋の紫式部」より 著者:岡本かの子
執る。老侍女は所在なさそうにまじまじ式部の様子を見入っている） （夕暮に向う鐘、
虫の音高くなる） 老侍女「ねえ、奥様」 式部「なんです」 老侍女「今朝ほどから随....
「画筆に生きる五十年」より 著者:上村松園
「税所敦子孝養図」 同 四十年 「花のにぎはひ」北陸絵画共進会出品（一等賞）「
虫の音」日本美術協会出品（三等賞）「長夜」文展第一回出品（三等賞） 同 四十一年....
「活人形」より 著者:泉鏡花
が物を言うに返事もしないか。と声荒らかに呼わりて、掴み挫がん有様に、お藤は霜枯の
虫の音にて、「あれ、御堪忍なさいまし。「何も謝罪る事アねえ。機嫌よくお盃を受けろ....
「感覚の回生」より 著者:小川未明
叩き落したものである。 また草の繁った中に入って、チッ、チッ、チッと啼いている
虫の音を聞き澄して捕えようと焦ったものだ。自分の踏んだ草が、自然に刎ね返って、延....