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「蚊遣り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

蚊遣りの前後の文節・文章を表示しています。該当する10件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:島崎藤村
てあった笹の葉はまだ私の目にある。あれを刈りに行くものは、腰に火縄を提げ、それを蚊遣りの代わりとし、襲い来る無数の藪蚊と戦いながら、高い崖の上に生えているのを下....
田舎教師」より 著者:田山花袋
、汚なく人に踏まれている。蚊はもう夕暮れには軒に音を立てるほど集まって来て、夜は蚊遣り火の煙が家々からなびいた。清三は一円五十銭で、一人寝の綿|蚊帳を買って来て....
春昼」より 著者:泉鏡花
あけからは、目に立って日が詰ります処へ、一度は一度と、散歩のお帰りが遅くなって、蚊遣りでも我慢が出来ず、私が此処へ蚊帳を釣って潜込んでから、帰って見えて、晩飯も....
風流仏」より 著者:幸田露伴
夕涼み快きをも余所になし、徒らに垣をからみし夕顔の暮れ残るを見ながら白檀の切り屑蚊遣りに焼きて是も余徳とあり難かるこそおかしけれ。顔の色を林間の紅葉に争いて酒に....
十姉妹」より 著者:山本勝治
永引いたため夜十時頃帰宅した慎作は、敷居を跨たぐと同時にはッとして棒立になった。蚊遣りの煙りが薄い幕の様に立ちこめたほの暗い土間で、白襦袢一枚の父と祖父とが並ん....
」より 著者:海野十三
既に暮れてこの比野の家々には燭力の弱い電灯がつき、開かれた戸口からは、昔ながらの蚊遣りの煙が濛々とふきだしていた。 丁度その頃、一人の見慣れない紳士が、この町....
南北の東海道四谷怪談」より 著者:田中貢太郎
しい体をひきずるようにして、台所から亀裂の入った火鉢を出して来た。そして、それに蚊遣りをしかけながら宅悦を見た。 「いくらなんでも、あんまりじゃないか、こんなに....
怪異黒姫おろし」より 著者:江見水蔭
蚊が少くないのであった。団扇使いは御寝の妨げと差控え、その代り名香をふんだんに、蚊遣り火の如く焚くのは怠らなかった。それも併し、時の過ぎるに従って、昼間のつかれ....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
が、夕風にうごき出した。 「きょうも、角兵衛どのは、宿直なのか?」 母屋に煙る蚊遣りを眺めながら、小次郎は部屋の中に寝そべった。 灯火はいらなかった。燈して....
大谷刑部」より 著者:吉川英治
ようにわらわらとすぐ塀の外を続いてゆく兵の跫音であった。 「やっ? ……あれは」蚊遣りの側から腰を泛かしかけると、槍組|頭の湯浅五助が、 「何事でもござりませぬ....