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蚋
「蚋〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蚋の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
った。麦類には黒穂の、馬鈴薯《ばれいしょ》にはべと病の徴候が見えた。虻《あぶ》と
蚋《ぶよ》とは自然の斥候《せっこう》のようにもやもやと飛び廻った。濡れたままに積....
「梓川の上流」より 著者:小島烏水
かりがねそう》を掻き分けたことや、自分の肩から上を気圏のように繞《め》ぐっていた
蚋《ぶと》の幾十|陣団《じんだん》やに窒息するかと苦しんだことも、夢の谷へ下りて....
「彼は昔の彼ならず」より 著者:太宰治
こっちにいたのですか。」僕は唇にあてたビイルのコップを下へ置いた。コップの中には
蚋《ぶよ》に似た小さい虫が一匹浮いて、泡のうえでしきりにもがいていた。 「ええ。....
「如是我聞」より 著者:太宰治
を閉して、自ら入らず、入らんとする人の入るをも許さぬなり。盲目なる手引よ、汝らは
蚋を漉し出して駱駝を呑むなり。禍害なるかな、偽善なる学者、外は人に正しく見ゆれど....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
です。横三十マイルにもひろがる|悪魔の尿溜の上空をぎっしりと埋めて、おそろしい蚊
蚋の大群が群れているのです。マラリア、デング熱の病原蚊、睡眠病の蠅、毒
蚋、ナイフ....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
伊那百十九か村の村民が行き悩むのもその道だ。木から落ちる山蛭、往来の人に取りつく
蚋、勁い風に鳴る熊笹、そのおりおりの路傍に見つけるものを引き合いに出さないまでも....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
捨て、彼らの田園を離れ、木曾下四か宿への当分助郷、あるいは大助郷と言って、山蛭や
蚋なぞの多い四里あまりのけわしい嶺の向こうから通って来たのもその山道である。 ....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
那の方へぬける山道ですら、昼でも暗い森に、木から落ちる山蛭に、往来の人に取りつく
蚋に、勁い風に鳴る熊笹に、旅するものの行き悩むのもあの山間であるが、音に聞こえた....
「家」より 著者:島崎藤村
た時は沓掛から歩きましたが、途中で虻に付かれて困りましたッけ」 「ええ、蠅だの、
蚋だの……そういうものは木曾路の名物です。産馬地の故でしょうね」 こんな言葉を....
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
れになっている、うっかり手が触れると、海鼠の肌のような滑らかで、悚然とさせる、毒
蚋が、人々の肩から上を、空気のように離れずにめぐっている、誰も螫されない人はない....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
全容をあらわした、左の肩の最高峰朝日岳には、雪が縦縞の白い斑を入れている、小さな
蚋が眼の前を、粉雪のように目まぐるしく舞う、森の屋根を剥がされた空からは、晃々と....
「琵琶伝」より 著者:泉鏡花
、めしあがるものといっちゃ、一粒の御飯もなし、内に居てさえひどいものを、ま、蚊や
蚋でどんなだろうねえ。脱営をなすったッて。もう、お前も知ってる通り、今朝ッからど....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
いの、これはこの苔が持っている、そうね、まあ、あの蜘蛛が虫を捕える糸よ。蟻だの、
蚋だの、留まると遁がさない道具だわ。あなた名を知らないでしょう、これはね、モウセ....
「二都物語」より 著者:佐々木直次郎
らゆらと揺れがたがたと音を立てながら登って行った。馭者たちは、無数の遊糸のような
蚋があの蛇神復讐女神に代って自分たちの周りをぐるぐる※っている中を、ゆったりと自....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
にいい小屋があると教えられたけれども、今更どうなるものでもなかった。里近いだけに
蚋の多いのには困ったが、あたりの草を薙ぎ倒して風上から火を放ったので、少し落ち着....