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蛍火
「蛍火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蛍火の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
そうして実に不思議なことには、どこからか光が射して来ると見えて、仄々とした薄明が
蛍火のように蒼白く、窟内一杯に充ちている。 こうして今の時間にして一時間余も歩....
「殺神記」より 著者:田中貢太郎
馬を控えた。黒い山の背がやはり前方の空を支えていた。暗い谷間の方へ眼をやった時、
蛍火のような一個の微な微な光を見つけた。 「人家だ」 元振は眼を輝かした。人家....
「黄金虫」より 著者:佐々木直次郎
いちばん奥深いところでは、昨夜の冒険であんなに見事に証明されたあの事実の概念が、
蛍火《ほたるび》のように、かすかに、ひらめいたようだった。僕はすぐ立ち上がり、羊....
「空襲警報」より 著者:海野十三
仕事であるのに、鉄道省は、見事にそれをやってのけた。……黒白もわかぬ暗黒の夜に、
蛍火のような信号灯一つをたよりに、列車でもなんでも、ふだんと変わらぬ速さと変わら....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
処を指して、時計は死んでいるのであるが、鮮明にその数字さえ算えられたのは、一点、
蛍火の薄く、そして瞬をせぬのがあって、胸のあたりから、斜に影を宿したためで。 ....
「貉」より 著者:小泉八雲
振り返ってみる勇気もなくて、ただひた走りに走りつづけた挙句、ようよう遥か遠くに、
蛍火の光っているように見える提灯を見つけて、その方に向って行った。それは道側に屋....
「大阪の憂鬱」より 著者:織田作之助
である。いっそ蛍を飛ばすなら、祇園、先斗町の帰り、木屋町を流れる高瀬川の上を飛ぶ
蛍火や、高台寺の樹の間を縫うて、流れ星のように、いや人魂のようにふっと光って、ふ....
「おせん」より 著者:邦枝完二
、こっちへよこしねえ」 「へえ」 「なぜ煙管を取らねえんだ」 「へえ」 「それ、
蛍火ほどの火もねえじゃねえか。何んで煙草をつけるんだ」 相手は黙々とした少年だ....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
す死恥旗|天蓋と、蛇目傘開いて肩身をすぼめ、おとせ、あれあれ草葉の露に、青い幽な
蛍火一つ、二つないのは心にかかる。されど露には影さすものを、わたしゃ影でも厭いは....
「妖怪学」より 著者:井上円了
気よしあしをもって年の豊凶を知れ 柳の栄ゆる年は米よく熟す また、一首の歌に、
蛍火の少なき年は秋の田の刈穂も実のりよしと知るへし 以上、天気の吉凶、風水の有....
「妖怪学一斑」より 著者:井上円了
る、すなわち烏が風雨を知るという話があります。また、柳の繁殖する年は豊作である、
蛍火のない年は秋の田の実りがいいというようなことを、通俗に申し伝えております。こ....
「迷信解」より 著者:井上円了
の怪火と同種のものにても、平素見慣れたるものはだれありて怪しむものはない。例えば
蛍火のごとき、人の怪しまざるのみならず、かえってこれを愛し、これを楽しむ。また、....
「西航日録」より 著者:井上円了
すべし。夜に入りて月まさにくらし。満天星近く懸かり、港内の灯光上下点々、あたかも
蛍火を見るがごとき観あり。今夕、福島将軍入港の報あれども、帰船後にして相会するを....
「馬の顔」より 著者:田中貢太郎
ていると、数多の蛍が来て股のあたりへ集まっていた。秀才がそれを見て冗談を云うと、
蛍火が消えて美しい女が出て来たので、それを愛好したと云う話であった。 (どうだい....
「黄灯」より 著者:田中貢太郎
るのが浮んで来る。 街が左にすこし折れまがって、曲り角に電柱が見えて来た。青い
蛍火の団ったような一団の鬼火がどこからとなく飛んで来て、それが非常な勢いで電柱に....