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蟠
「蟠〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蟠の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
り合わないような――しかもそのしっくり合わない向うには、私の自覚を超越した秘密が
蟠《わだかま》っているような、気味の悪い心もちがするのでございます。
それがざ....
「邪宗門」より 著者:芥川竜之介
見えない筈でございますが、この雲気はただ、虚空《こくう》に何やら形の見えぬものが
蟠《わだか》まったと思うばかりで、晴れ渡った空の色さえ、元の通り朗かに見透かされ....
「路上」より 著者:芥川竜之介
通じている俊助は、今また野村の帰郷を必要としている背後にも、どれほど複雑な問題が
蟠《わだか》まっているか、略《ほぼ》想像出来るような心もちがした。
「まず当分は....
「るしへる」より 著者:芥川竜之介
だ、皮相の見《けん》に止るのみ。汝が心には、恐しき七つの罪、蝎《さそり》の如くに
蟠《わだかま》らん、」と。「るしへる」再び、嘲笑う如き声にて云うよう、「七つの罪....
「竜」より 著者:芥川竜之介
え竜が居たなら、ましてこれほどの池の底には、何十匹となく蛟竜《こうりゅう》毒蛇が
蟠《わだかま》って居ようも知れぬ道理《ことわり》じゃ。』と、説法したそうでござい....
「捨児」より 著者:芥川竜之介
婦の間《あいだ》に生まれました。勿論悲惨な捨子の記憶は、この間も夫婦の心の底に、
蟠《わだかま》っていたのに違いありません。殊に女は赤子の口へ乏しい乳を注ぐ度に、....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
奥に、真暗な巌窟の中に、一ヶ処清水の湧く井戸がござります。古色の夥しい青銅の竜が
蟠って、井桁に蓋をしておりまして、金網を張り、みだりに近づいてはなりませぬが、霊....
「半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
榎、大楠、老樫、森々と暗く聳えて、瑠璃、瑪瑙の盤、また薬研が幾つも並んだように、
蟠った樹の根の脈々、巌の底、青い小石一つの、その下からも、むくむくとも噴出さず、....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
て弱身を見せじと、擬勢は示すが、川柳に曰く、鏝塗りの形に動く雲の峰で、蝋燭の影に
蟠る魔物の目から、身体を遮りたそうに、下塗の本体、しきりに手を振る。…… 「可い....
「神鷺之巻」より 著者:泉鏡花
根の、譬えば黒い珊瑚碓のごとく、堆く築いて、青く白く、立浪を砕くように床の縁下へ
蟠ったのが、三間四面の御堂を、組桟敷のごとく、さながら枝の上に支えていて、下蔭は....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
い、青大将め。――聞けばそいつが(次第前後す、段々解る)その三崎町のお伽堂とかで
蟠を巻いて黒い舌をべらべらとやるのかい。」 「横笛は、八本の調子を、もう一本上げ....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
の丈の最も勝れた松が二株あって、海に寄ったのは亭々として雲を凌ぎ、町へ寄ったは拮
蟠して、枝を低く、彼処に湧出づる清水に翳す。…… そこに、青き苔の滑かなる、石....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
に思った。蓋し生れつき面が狼に似たばかりでない。腹に暗き鬼を生ずとしてある疑心の
蟠があったのも、お夏を一目見たばかりで、霧の散ったように、我ながらに掴え処もなく....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
。姿も容も、世にまたかほどまでに打解けた、ものを隠さぬ人を信じた、美しい、しかも
蟠のない言葉はあるまい。 左の衣兜 二十二 意外な言葉....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
た鴛鴦の姿にも擬えられよう。…… 墓へ入口の、やや同じたけの松の根に、ちょっと
蟠って高いから――腰を掛けても足が伸びるのに、背かがみになった膝に両手を置いて、....