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行く秋
「行く秋〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
行く秋の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「野分」より 著者:夏目漱石
開《あ》けて茶色の中折《なかおれ》を取り出す。門口《かどぐち》へ出て空を仰ぐと、
行く秋を重いものが上から囲んでいる。 「御婆さん、御婆さん」 はいと婆さんが雑....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
た。それほど彼もいらいらとしていた。 十月末のことで、一日は一日より深くなって
行く秋が旅にある半蔵の身にひしひしと感じられた。神田川はその二階の位置から隠れて....
「是は現実的な感想」より 著者:宮本百合子
始めて郊外に住んで、今年は、永く美しく夏から次第に移り
行く秋の風景を目撃した。これまで、春から夏になる――初夏の自然は度々亢奮して活々....
「源氏物語」より 著者:紫式部
た。同車の人へもその点で御自身も苦しんでおいでになることばかりをお話しになった。
行く秋の黄昏時の心細さの覚えられる路へ、冷たい雨が降りそそいでいた。衣服を湿らせ....
「源氏物語」より 著者:紫式部
の所よりもきれいにいろいろと混じって立った庭であったから、門をはいるとすぐにもう
行く秋の身にしむことを中将は感じた。この風雅な場所に住む美しい人を恋人にしていた....
「秋毛」より 著者:宮本百合子
居なければならない。 抜毛を見ながらも、変な青っぽい眼を見ながらも、徒に立って
行く秋の貴さと健康の有難味を思う。 健康で居て暇無しに仕事をして行けるのが何よ....
「「平家物語」ぬきほ(言文一致訳)」より 著者:作者不詳
を渡る梶の葉におもう事をかく頃となった。ものを思わない心配のない人でさえもくれて
行く秋の夕べの景色はかなしいだろう。まして心配のある人の心の内がおしはかられて可....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
縁に立っている源三郎だ。
柱によりかかって、じっと見上げているのは……空を
行く秋のたたみ雲。
あせっているんです、源三郎は。
いつまでこうしていても、....
「だいこん」より 著者:久生十蘭
けると思って、ダイヤルをひねくりまわすうちに、空の高いところをサラサラとわたって
行く秋風のようなわびしい音が流れだしてきた。 セットの横っ腹に耳をつけると、〈....
「駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
光景に驚かされた、かすかな深夜の風が玉蜀黍の枯葉に戦いで、轡虫の声が絶え絶えに、
行く秋のあわれをこめて聞えて来る。先刻、目黒の不動の門前を通ったことだけは夢のよ....
「おせん」より 著者:邦枝完二
ていたのは、それから間もない後だった。瓦のおもてに、あとからあとから吸い込まれて
行く秋雨の、時おり、隣の家から飛んで来た柳の落葉を、貼り付けるように濡らして消え....
「広告」より 著者:伊丹万作
松の影 あらましを閉せしのみの夕牡丹 夏草や野島ヶ崎は波ばかり 眼の前を江の奥へ
行く秋の波 降る雪や明治は遠くなりにけり (昭和十二年四月二十六日)....
「南北」より 著者:横光利一
方へ歩いていった。 勘次は裏庭から店の間へ来ると、南天の蔭に背中を見せて帰って
行く秋三の姿が眼についた。 「今来たのは秋公か?」 「お前、秋が安次を連れて来て....
「中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
れじ春の夜の夢 仄かにぞ月は残れる時鳥いま一声をおもかげにして 露霜にあへずかれ
行く秋草の糸よりよわき虫のこゑかな 住捨てて残る庵もかたぶきぬ刈り田淋しき四方の....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
無心なものである物は一つもなかった。そうして有情の天地に触れると、彼の幼い心も、
行く秋の草や虫や水と共に蕭々とうら寂しい顫えを鳴り立ててくる。 彼はふいに、大....