行交う[語句情報] » 行交う

「行交う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

行交うの前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
職工と微笑」より 著者:松永延造
の立って居る所を私は一寸見掛けたのです。そして私は二人の間に何かしら恋愛の火花が行交うているのを感じたんです。勿論その時は感じた丈なんですが……」 「では……あ....
婦系図」より 著者:泉鏡花
が、お妙である。 リボンも顔も単に白く、かすりの羽織が夜の艶に、ちらちらと蝶が行交う歩行ぶり、紅ちらめく袖は長いが、不断着の姿は、年も二ツ三ツ長けて大人びて、....
伸子」より 著者:宮本百合子
て、逆に群集をかきわけて来た。よろよろとして、据りのわるい首を揺ってはぶしつけに行交う女の顔を覗いた。が、いきなりどたどたとよろけると、伸子の直ぐ先にいた一人の....
薬草取」より 著者:泉鏡花
、向うを向いてしまいました。 台所から、中の室から、玄関あたりは、ばたばた人の行交う音。尤も帯をしめようとして、濃いお納戸の紋着に下じめの装で倒れた時、乳母が....
夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
自分でも断念のため。……ばかりじゃ無い、……雁、燕の行きかえり、軒なり、空なり、行交う目を、ちょっとは紛らす事もあろうと、昼間は白髪の仮髪を被る。 学円 (黙然....
伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
つ、日盛の町の大路が望まれて、煉瓦造の避雷針、古い白壁、寺の塔など睫を擽る中に、行交う人は点々と蝙蝠のごとく、電車は光りながら山椒魚の這うのに似ている。 忘れ....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
んと轡が揺れそうな合方となる。 絶えず続いて、音色は替っても、囃子は留まらず、行交う船脚は水に流れ、蜘蛛手に、角ぐむ蘆の根を潜って、消えるかとすれば、ふわふわ....
縁結び」より 著者:泉鏡花
た雪のようなお君の顔の、美しく優しい眉のあたりを、ちらちらと蝶のように、紫の影が行交うと思うと、菫の薫がはっとして、やがて縋った手に力が入った。 お君の寂しく....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
人に対していささかも恥ずる心なかりしなり。 されども知りたるは多からず。小路を行交う市人もすべてわが知れりしよりは著しく足早になりぬ。活計にせわしきにや、夜ご....
露肆」より 著者:泉鏡花
、細い銀煙管を持ちながら、店が違いやす、と澄まして講談本を、ト円心に翳していて、行交う人の風采を、時々、水牛縁の眼鏡の上からじろりと視めるのが、意味ありそうで、....
星女郎」より 著者:泉鏡花
銀の鈴を揺上げると、峠から黄金の鐸を振下ろして、どこで結ばるともなく、ちりりりと行交うあたりは、目に見えぬ木の葉が舞い、霧が降る。 涼しさが身に染みて、鐸か、....
」より 著者:寺田寅彦
さき盛った野の花のように見え、天井に回るファンの羽ばたきとうなりが蜜蜂を思わせ、行交う人々が鹿のように鳥のようにまたニンフのように思われてくるのである。あらゆる....
三枚続」より 著者:泉鏡花
この三人しばらくの間というものはただ縦横に土間の上を駆け歩行いた。白い姿の慌しく行交うのを、見る者の目には極めて無意味であるが、彼等は各々に大雨を意識して四壁の....
註文帳」より 著者:泉鏡花
に引きそばめた臆病ものの可笑さよ。 戸外へ出ると、もう先刻から雪の降る底に雲の行交う中に、薄く隠れ、鮮かに顕れていたのがすっかり月の夜に変った。火の番の最後の....