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「表戸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

表戸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
北海道に就いての印象」より 著者:有島武郎
の朝であった。霜の上には薄い牛乳のような色の靄が青白く澱んでいた。私は早起きして表戸の野に新聞紙を拾いに出ると、東にあった二個の太陽を見出した。私は顔も洗わずに....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
ながら四五町、土橋を渡って、榎と柳で暗くなると、家があります。その取着らしいのの表戸を、きしきし、その若い人がやるけれど、開きますまい、あきません。その時さ、お....
わが母を語る」より 著者:上村松園
友一斤五圓五十銭也などと達者なお家流の字でかいてあります。正月の松の内など、店も表戸をしめて休みますが、その頃は出入口の戸障子に、酒屋なら「酒」お茶屋なら「茶」....
暗号数字」より 著者:海野十三
たのであった。 アシベ劇場は、通天閣のすぐ脇にあった。しかしあまり早朝なので、表戸はしまっていて内部を覗うよしもない。通りかかった女性に聞くと、まだ三時間ほど....
奇賊は支払う」より 著者:海野十三
が残っている。 4 疲れ切って自分の事務所に戻った探偵袋猫々だった。表戸の鍵をおろし、その他あらゆる出入口は厳重に閉め切った上で、彼は素裸となってゆ....
空気男」より 著者:海野十三
んで置いて、青色の器械のスイッチを押すと、ジジジーッという音がした。 とたんに表戸を激しく打ち叩く妻君の声。 「コラッ丘一。なぜ扉に鍵をかけたッ、早く明けない....
地獄街道」より 著者:海野十三
あげた。これがあの沈着な辻永とはどうして思えよう。彼はクルリとふりむくと、今度は表戸を蹴破るようにしてサッと外へ飛び出した。私には何もかも判った。実に辻永は例の....
電気風呂の怪死事件」より 著者:海野十三
ょっとすると、その女が、惨殺された女の着衣や下駄を自分の身につけて、澄ました顔で表戸から出て行ったのではなかろうか? だが、もしそうだとすると、その女は一体何処....
蠅男」より 著者:海野十三
の或る寒い朝のこと、まだあたりはほの明るくなったばかりの午前六時というに、商家の表戸はガラガラとくり開かれ、しもた家では天窓がゴソリと引き開けられた。旅館でも病....
一坪館」より 著者:海野十三
近所の二階家を一けん借りて生活していた。そして夜ふけによく源一のつとめている店の表戸をわれるようにたたき、ウイスキーや、かんづめを売れとわめいたものだった。みん....
カンカン虫殺人事件」より 著者:大阪圭吉
え、直ぐ近くですし、それにとても心安い間柄でしたから寄って呉れたんです。出がけに表戸の前で、「あの若僧すっかり震え上って了いおった。」とか「今夜は久し振りに飲め....
勝ずば」より 著者:岡本かの子
増しに度を増して来た時分、戦争が始まった。日に二三度も号外がけたたましい鈴の音を表戸にうち当てて配達された。 その頃から不思議に政枝の気分は健康になり、時には....
家霊」より 著者:岡本かの子
の番が廻って来て、拍子木が表の薄|硝子《ガラス》の障子に響けば看板、時間まえでも表戸を卸《おろ》すことになっている。 そこへ、草履《ぞうり》の音がぴたぴたと近....
河明り」より 著者:岡本かの子
私は帰る時機と思って、挨拶した。 河靄が立ち籠めてきた河岸通りの店々が、早く表戸を降している通りへ私は出た。 三四日、私は河沿いの部屋へ通うことを休んで見....
放浪」より 著者:織田作之助
いきなり引き返えし、坂道を降りて道頓堀へ出ると、足は芝居裏の遊廓へ向いた。殆んど表戸を閉めている中に一軒だけ、遣手婆が軒先で居眠りしている家を見つけ、あがった。....