»
衾
「衾〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
衾の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
やく橋の半ばを過ぎぬ。渠はたちまちのんきなる人の姿を認めぬ。何者かこれ、天地を枕
衾《ちんきん》として露下月前に快眠せる漢子《おのこ》は、数歩のうちにありて※《い....
「高野聖」より 著者:泉鏡花
そこうなった上に躊躇《ちゅうちょ》するわ、その顔を見て声を聞けば、かれら夫婦が同
衾《ひとつね》するのに枕《まくら》を並べて差支《さしつか》えぬ、それでも汗になっ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
、どちらの明でも、繋いだものの中は断たれず。…… ぶるぶる震うと、夫人はふいと
衾を出て、胸を圧えて、熟と見据えた目に、閨の内を※うごとく、裳も畳に漾ったが、や....
「春昼」より 著者:泉鏡花
鳳凰の舞う竜の宮居に、牡丹に遊ぶ麒麟を見ながら、獅子王の座に朝日影さす、桜の花を
衾として、明月の如き真珠を枕に、勿体なや、御添臥を夢見るかも知れぬ。よしそれとて....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
夫人 何しに来ました。 図書 御天守の三階中壇まで戻りますと、鳶ばかり大さの、野
衾かと存じます、大蝙蝠の黒い翼に、燈を煽ぎ消されまして、いかにとも、進退度を失い....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
と音がしそうに開いてしまうのは、心が冴えて寝られぬのである。 掻巻を引被れば、
衾の袖から襟かけて、大な洞穴のように覚えて、足を曳いて、何やらずるずると引入れそ....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
かえる隙もない、まだ出たてだという、新しさより、一人旅の木賃宿に、かよわい女が紙
衾の可哀さが見えた。 とばかりで、俊吉は黙って通過ぎた。 が、筋向うの格子戸....
「琵琶伝」より 著者:泉鏡花
のいかに強きかを知れるより、嫉妬のあまり、奸淫の念を節し、当初婚姻の夜よりして、
衾をともにせざるのみならず、一たびも来りてその妻を見しことあらざる、孤屋に幽閉の....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
らねば、町の外れなる酒屋の庫と観世物小屋の間に住めりと人々の言いあえる、恐しき野
衾の来て攫えて行くと、われはおさなき心に思いき。 その翼広げたる大きさは鳶に較....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
。 されば夫人が座の傍、肩掛、頭巾などを引掛けた、衣桁の際には、萌黄の緞子の夏
衾、高く、柔かに敷設けて、総附の塗枕、枕頭には蒔絵ものの煙草盆、鼻紙台も差置いた....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、あらためて、その(松や、)を言おうとすると、溜息になってしまう。蚊帳が煽るか、
衾が揺れるか、畳が動くか、胸が躍るか。膝を組み緊めて、肩を抱いても、びくびくと身....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
くくと啼く。 人はこういう処に、こうしていても、胸の雲霧の霽れぬ事は、寐られぬ
衾と相違はない。 徒らに砂を握れば、くぼみもせず、高くもならず、他愛なくほろほ....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
の唇を持って行くのがある。……いいえ、その路之助のですよ。女形の。……しかも同じ
衾の左右には、まくれたり、はだかったり、白い肌が濡れた羽衣に包まれたようになって....
「誓之巻」より 著者:泉鏡花
瓶に菊一輪、いつさしすてしか凋れたり。 東枕 襖左右に開きたれば、厚
衾重ねたる見ゆ。東に向けて臥床設けし、枕頭なる皿のなかに、蜜柑と熟したる葡萄と装....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
る手が、乱れた乳のあたりに萎々となると、ひとつ寝の枕に、つんと拗ねたように、砂の
衾に肩をかえて、包みたそうに蓑の片袖を横顔に衝と引いた姿態で、羽衣の翼は折れたん....