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裹
「裹〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
裹の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「あらくれ」より 著者:徳田秋声
の人家、黄色い懸稲《かけいね》、黝《くろ》い畑などが、一様に夕濛靄《ゆうもや》に
裹《つつ》まれて、一日|苦使《こきつか》われて疲れた体《からだ》を慵《ものう》げ....
「義血侠血」より 著者:泉鏡花
り合いは切歯《はがみ》をしつつ見送りたりしに、車は遠く一団の砂煙《すなけぶり》に
裹《つつ》まれて、ついに眼界のほかに失われき。 旅商人体《たびあきゅうどてい》....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
売りがあとからあとへと、入れ代り立ち換り、表通を流していった。 晴やかな笑声に
裹まれていた一座は、急に沈黙の群像のように黙りこくって仕舞った。 下田家の奥座....
「運命」より 著者:幸田露伴
み経を治め、其の家居するや恂々として儒者の如く、而も甲を※み剣を揮いて進み、創を
裹み歯を切って闘うが如き経験は、未だ曾て積まざりしなれば、燕王の笑って評せしもの....
「縮図」より 著者:徳田秋声
。 猿橋あたりへ来ると、窓から見える山は雨が降っているらしく、模糊として煙霧に
裹まれていたが、次第にそれが深くなって冷気が肌に迫って来た。その辺でもどうかする....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
カアブして来た。そのルウム・ライトの光の下に、野暮くさい束髪頭の黒羅紗のコオトに
裹まって、天鵞絨の肩掛けをした、四十二三のでぶでぶした婦人の赭ら顔が照らし出され....
「辞典」より 著者:戸坂潤
トにとっては、この弁証法は、論理学の正面を云い表わすその「分析論」と並んで、その
裹を検討するために、表面に出て来る必要があったのである。――この現象は、カントの....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
てみれば、ここから程遠からぬ叡山《えいざん》の山法師の初期に於て流行した、あの「
裹頭《かとう》」という姿が最もよくこれに似ている。
物ごとはすべて、習うよりは....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
の杉の森、神代から昼も薄暗い中を、ちらちらと流れまする五十鈴川を真中に、神路山が
裹みまして、いつも静に、神風がここから吹きます、ここに白木造の尊いお宮がござりま....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
感覚の鋭敏を示すものである。なお、家持には、「消のこりの雪にあへ照る足引の山橘を
裹につみ来な」(巻二十・四四七一)という歌もあって、山橘に興味を持っていることが....
「取舵」より 著者:泉鏡花
なり。衆人はその無法なるに愕けり。 渠は手も足も肉落ちて、赭黒き皮のみぞ骸骨を
裹みたる然と陥みて盲いたり。 木綿袷の條柄も分かぬまでに着古したるを後※の杖と....
「くぐつ名義考」より 著者:喜田貞吉
名づけしにや。又海の物など入るる器物にくぐつといへる、万葉などに見ゆ。袖中抄に「
裹」字をよみて、莎草を編みて袋にしたるをいふ也、万葉集抄には、細き縄を持物入るゝ....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
女子は
香料を
み体に塗りまつり、
臥させまつりぬ。
巾をもて、紐をもて
清らに
裹みまつりぬ。
さるを、あなや、主の
こゝにいまさぬ。
歌う天使の群
ク....
「世間師」より 著者:小栗風葉
や、人の匂や、変に生暖い悪臭い蒸れた気がムーッと来る。薄暗い二間には、襤褸布団に
裹って十人近くも寝ているようだ。まだ睡つかぬ者は、頭を挙げて新入の私を訝しそうに....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
末は低く垂れた幽鬱な空の方に拡がって行く。其下に富山平原の一部が一様に灰色の幕に
裹まれて、死滅した世界のように静に横たわっている。 雪が尽きて急な岩の梯子を二....