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褪
「褪〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
褪の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
黒ずんだ縁側《えんがわ》に並んでいた。が、それ等は腰の高い、赤いクッションの色の
褪《さ》めた半世紀前の古椅子だった。信輔はこの二脚の椅子に全中流下層階級を感じた....
「少年」より 著者:芥川竜之介
すると乗客の降り終るが早いか、十一二の少女が一人、まっ先に自働車へはいって来た。
褪紅色《たいこうしょく》の洋服に空色の帽子《ぼうし》を阿弥陀《あみだ》にかぶった....
「外科室」より 著者:泉鏡花
とがい》細りて手足は綾羅《りょうら》にだも堪えざるべし。脣《くちびる》の色少しく
褪《あ》せたるに、玉のごとき前歯かすかに見え、眼《め》は固く閉ざしたるが、眉《ま....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
立った魚屋は、渾名を(め組)と称える、名代の芝ッ児。 半纏は薄汚れ、腹掛の色が
褪せ、三尺が捻じくれて、股引は縮んだ、が、盤台は美い。 いつもの向顱巻が、四五....
「海異記」より 著者:泉鏡花
って泣き出したあだよ。」 いわれはかくと聞えたが、女房は何にもいわず、唇の色が
褪せていた。 「苫を上げて、ぼやりと光って、こんの兄哥の形がな、暗中へ出さしった....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
帽子を、白い眉尖深々と被って、鼠の羅紗の道行着た、股引を太く白足袋の雪駄穿。色|
褪せた鬱金の風呂敷、真中を紐で結えた包を、西行背負に胸で結んで、これも信玄袋を手....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
る。 近いて見ると、いや、荷の蔭に人が居た。 男か、女か。 と、見た体は、
褪せた尻切の茶の筒袖を着て、袖を合わせて、手を拱き、紺の脚絆穿、草鞋掛の細い脚を....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
保存されたと思うまで、色合、恰好、そのままの大革鞄を、下にも置かず、やっぱり色の
褪せた鼠の半外套の袖に引着けた、その一人の旅客を認めたのである。 私は熟と視て....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
六十に余る、鼠と黒の万筋の袷に黒の三ツ紋の羽織、折目はきちんと正しいが、色のやや
褪せたを着、焦茶の織ものの帯を胴ぶくれに、懐大きく、腰下りに締めた、顔は瘠せた、....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
しい物も古い物も見境いなく着つづけていたので、花聟の衣裳は磨り切れて艶々しい色も
褪せ、荒野の悪い野良犬や尖った茨にその柔らかな布地は引き裂かれてしまった。 昼....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
露垂るばかりの一面の額、ならべて壁に懸けた標本の中なる一輪の牡丹の紅は、色はまだ
褪せ果てぬが、かえって絵のように見えて、薄暗い中へ衝と入った主の姫が、白と紫を襲....
「豊島与志雄氏の事」より 著者:芥川竜之介
最近の事である。僕が始めて豊島与志雄と云う名を知ったのは、一高の校友会雑誌に、「
褪紅色の珠」と云う小品が出た時だろう。それがどう云う訳か、僕の記憶には「登志雄」....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
たりは、さらぬだに、あまり健康そうにはないのが、薄痩せて見えるまで、その処々色が
褪せて禿げている。――茶の唐縮緬の帯、それよりも煙草に相応わないのは、東京のなに....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
斟酌があろうか、段々|身体を衰えさして、年紀はまだ二十二というのに全盛の色もやや
褪せて、素顔では、と源平の輩に遠慮をするようになると、二度三度、月の内に枕が上ら....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
夏は袖をくるりと白く、 「こんなよ、愛吉。」 いわれたその二の腕の不審紙。色の
褪せたのに歯を噛んで、裾に火の粉も知らずに寝た、愛吉が、さも痛そうに、身ぶるいし....