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襞
「襞〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
襞の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「将軍」より 著者:芥川竜之介
八軒、ひっそりと暁《あかつき》を迎えている、――その家々の屋根の上には、石油色に
襞《ひだ》をなぞった、寒い茶褐色の松樹山《しょうじゅざん》が、目の前に迫って見え....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
る画家が、その人の耳目鼻口をそれぞれ綿密に観察するように、君は山の一つの皺一つの
襞にも君だけが理解すると思える意味を見いだそうと努めた。実際君の目には山のすべて....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
時代には自然科学はおのずから神話の衣裳を着ている。もっと程度が高くなればそれは褶
襞の多い哲学の外套を着ているのである。しかしひとたび人間が観察と経験の収集を始め....
「耽溺」より 著者:岩野泡鳴
ている番台のふちに片手をかけて女に向うと、女はまた、どこで得たのか、白い寒冷紗の
襞つき西洋寝巻きをつけて、そのそばに立ちながら涼んでいた。湯あがりの化粧をした顔....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
クリームのような真白な肌がすこしばかり見えて、その下に緑色のドレスがふっくらした
襞績目をつくって、下に悩ましい曲線を隠していることを囁いていた。 ――僕のいつ....
「爬虫館事件」より 著者:海野十三
部がパクンと口を開いた。が、内部は同心管のようになっていて、鱶の鰭のような大きな
襞のついた其の同心管の内側が、白っぽく見えるだけで、中には何も入っていなかった。....
「白妖」より 著者:大阪圭吉
続けていた。S字型のジッグザッグ道路で、鋸の歯のような猛烈なスイッチバックの中を
襞※の向うへ走り去る。同じところをグルグル廻っているようだが、それでいて少しずつ....
「山と雪の日記」より 著者:板倉勝宣
わしい空の下に上高地の谷をへだてて、手のとどきそうなすぐ前に、穂高の雄姿が、岩の
襞を一つ一つ、数えられそうに見える。麓からじき上に、緑の草の萌えて見える谷に、Y....
「五色温泉スキー日記」より 著者:板倉勝宣
またさきに平野が美しく横たわって見える。こういうところから見ると、山は全く地球の
襞だと合点される。天体から見ると無いといってもいいような地球の上にまたあんな
襞が....
「脳の中の麗人」より 著者:海野十三
ように簡単に切開できるせいだった。よく気をつけてみると、毛髪の下の皮膚が、うすく
襞状になっているのが見えないこともないが、それが見えたとて、誰もそれを傷痕と思う....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
ある。まだお膳も並ばぬうち、譬喩にもしろ憚るべきだが、密と謂おう。――繻子の袴の
襞※とるよりも――とさえいうのである。いわんや……で、綾の見事さはなお目立つが、....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
て、掻巻の襟を引張ると、暗がりの中に、その袖が一波打って煽るに連れて、白い蔽に、
襞※が入って、何だか、呼吸をするように、ぶるぶると動き出す。 目を塞いでも、こ....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
紫がかって居りました、下衣は白地で、上衣より二三|寸下に延び、それには袴のように
襞が取ってありました。頭髪は頭の頂辺で輪を造ったもので、ここにも古代らしい匂が充....
「坑鬼」より 著者:大阪圭吉
は、まだ四月にはいったばかりの寒い頃のことであった。地上には季節の名残りが山々の
襞に深い雪をとどめて、身を切るような北国の海風が、終日陰気に吹きまくっていようと....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
ところへ、六十近いお婆さんだから、懐しさぶりを露骨に、火鉢を押して乗出した膝が、
襞※捩れの黒袴。紬だか、何だか、地紋のある焦茶の被布を着て、その胡麻塩です。眉毛....