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覆う
「覆う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
覆うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奈々子」より 著者:伊藤左千夫
く見いっていると、自分はどうしてもこの子が呼吸してるように思われてならない。胸に
覆うてある単物《ひとえもの》のある点がいくらか動いておって、それが呼吸のために動....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
。 一つの「有」もなく一つの「非有」もなかった、 空気で満たされた空間も、それを
覆う天もなかった。 何物が動いていたか、そして何処に。動いていたのは誰であったか....
「映画界手近の問題」より 著者:伊丹万作
遺憾ながら奴隷、あるいは監獄部屋の人たちの境涯にはなはだしく似かよってきたことは
覆うべからざる事実である。 話もここまでくれば、これはもはや思想的立場を引合い....
「恐怖の口笛」より 著者:海野十三
まりなき吸血鬼が出たのだ。帽子は飛んでしまっているが、グッと剥きだした白眼の下を
覆う黒い覆面の布。おお、これは先刻この地底へ下っていった黒影の人物だった。そして....
「三狂人」より 著者:大阪圭吉
夫妻を加えて七人の男女が暮しているわけだが、それとても荒廃しきった禿山の静けさを
覆うには、余りにも陰気な集りに過ぎなかった。 締め切った窓に蜘蛛の巣が張り、埃....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
た。 「お酌しましょうよ」 わたくしはこの間に、ほんの四つ五つの型だけで全身を
覆うほどの大矢羽根が紅紫の鹿の子模様で埋り、余地の卵黄色も赤白の鹿の子模様で埋ま....
「転機」より 著者:伊藤野枝
すと思わず私はそこにしゃがんだ。道は小砂利を敷きつめてあって、その上を細かい砂が
覆うている。むき出しにされて、その上に冷たさでかじかんだ足の裏には、その刺戟が、....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
縫うと見えて、寂しい処幾曲り。やがて二階屋が建続き、町幅が糸のよう、月の光を廂で
覆うて、両側の暗い軒に、掛行燈が疎に白く、枯柳に星が乱れて、壁の蒼いのが処々。長....
「わがまま」より 著者:伊藤野枝
袋の中から葉書と鉛筆を出した。そしてまき子のたっている反対の方をむいて葉書を顔で
覆うようにして男の居所と名前を手早く書きつけて裏返した。何を書こう? 何にも書け....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
るばかり、その不思議な媚しさは、貸小袖に魂が入って立ったとも見えるし、行燈の灯を
覆うた裲襠の袂に、蝴蝶が宿って、夢が※とも見える。 「難有う、」 「奥さん難有う....
「坑鬼」より 著者:大阪圭吉
いたのであった。 仰向きになって大の字なりに倒れた屍体の上には、殆んど上半身を
覆うようにして、前より一層大きな、飛石ほどもあろうと思われる平たい炭塊がのしかか....
「欧米各国 政教日記」より 著者:井上円了
う。しかれども、堂内の装飾は平常に異なるを覚えず。ただその平常に異なるは、礼壇を
覆うに黒色の帛布を用うるのみ。ローマ宗の寺院はこれに反し、堂内別にヤソ処刑の礼壇....
「魂の喘ぎ」より 著者:大倉燁子
こに公高がいたなら私は彼に飛びかかって首をしめつけたでしょう。 私は両手で顔を
覆うて突伏して泣きました。長い間泣きつづけました、この恐しい打撃にもう起ち上る気....
「深夜の客」より 著者:大倉燁子
も辛く、私の顔が母に似ず、段々亡父に似てくるので養父はひどく厭がって、時には眼を
覆うて私の顔を見ないようにしたりするのも辛うございます。親友なら懐しそうなもので....
「恐怖の幻兵団員」より 著者:大倉燁子
ざいましたの? これはあの日着ていたワイシャツの布地です、ああ」夫人は両手で顔を
覆うと、 「やッぱり! 私の想像した通りだったんですもの先生、一雄はきっと殺され....