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「見る影もない〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

見る影もないの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
富士」より 著者:岡本かの子
た。 自分は眩暈《めまい》がして裂けた。息を吹き返して気が付いたときに、自分は見る影もない姿に壊れていた。胸から噴き流れて凝った血が、岩となって二枚目の肋骨と....
幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
う、私は篤《とく》と夏子の顔を見ましたが、如何にも美人で、作り直す事が勿体ない、見る影もない醜婦にする事は容易ですが、それでは造化の美術を傷つける様な者で天に対....
聖アレキセイ寺院の惨劇」より 著者:小栗虫太郎
レンコは一種の志士業者で、右翼団体の天竜会が養っているそうだが、ひどい結核患者で見る影もないよ。あいつは昨夜ジナイーダが結婚すると云う噂に亢奮して、終夜この周囲....
菊模様皿山奇談」より 著者:三遊亭円朝
ないか、其の客に対して宿屋の忰が然んな無礼なことを云って済みますか、浪人して今は見る影もない尾羽打枯した身の上でも、お前たちのようなはしたない下郎を亭主に持つよ....
怪談牡丹灯籠」より 著者:三遊亭円朝
は不孝ものめ、仮令一人の娘でも手打にする処だが、併し紺看板に真鍮巻の木刀を差した見る影もない者に惚れたというのは、孝助殿の男振の好いのに惚れたか、又は姿の好いの....
敵討札所の霊験」より 著者:三遊亭円朝
違ないのじゃが、それが此の世の生涯で、大沓の渡しを越える渡口の所に、いや最うはや見る影もない姿で誠に情ない、それは/\迚も/\何とも云い様のない姿に斬殺されて居....
燕と王子」より 著者:有島武郎
だんだんにすくなくなってかわいそうにこの間までまばゆいほどに美しかったおすがたが見る影もないものになってしまいました。ある日の夕方王子は静かに燕をかえり見て、 ....
宝島」より 著者:佐々木直次郎
またそうなのであった。私たちの真正面の、南の瑞に、もうぼろぼろに腐朽してしまって見る影もない船が一艘見えた。もとは三本|檣の大きな船であったのだが、ずいぶん永い....
明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
隅にかねて弟達也の別居用につくっておいた質素な洋館へ引越し、わずかに残った株券で見る影もない生活をしている。弟達也は当年二十五、立派な青年紳士であるが、自分の住....
二都物語」より 著者:佐々木直次郎
間の声らしい生気ある響をすっかり失っているので、かつては美しかった色彩が色褪せて見る影もない薄ぎたない汚染になってしまったような感じを与えるのであった。それは非....
塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
かな声を出しまして、 右「旦那様、八年ぶりで貴方にお目にかゝりました所、彼の通り見る影もないお身の上、御新造様からも五十金才覚してくれと家来の私へ手をついてのお....
オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
ような形、…………………………………………………。 既に、風間九十郎の上には、見る影もない腐朽の印がとどめられているのだった。 「こら坊主、香を焚け、香を……....
宝塚生い立ちの記」より 著者:小林一三
理想郷としてあまねく、その名を知られている宝塚ではあるが、学校をはじめた当時は、見る影もない寂しい一寒村にすぎなかった。 そして宝塚という名称は、以前には温泉....
おかしいまちがい」より 著者:小川未明
う、うわさを聞きましたが、もう帰ってきなすったのか。」と、その人は怪しみながら、見る影もない男のようすを見守って問いました。 男は、なにかいいたかったが、疲れ....
料理一夕話」より 著者:北大路魯山人
ざる事象であろう。 しかし、中国の現在は、料理も食器も、書も画も、みな堕落して見る影もない。 世の中は段々と厳しく激しいものになる。なにもかも押し流される。....