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見失う
「見失う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
見失うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
きかず、義理一ぺんの見送り人は、ややともするとまわりに気が取られて見送るべき人を
見失う。そんなあわただしい抜錨《ばつびょう》の間ぎわになった。葉子の前にも、急に....
「或る女」より 著者:有島武郎
た自分が自分ながら不思議なくらいだった。どんなに情に激した時でもたいていは自分を
見失うような事はしないで通して来た葉子にはそれがひどく恥ずかしかった。船の中にい....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
まっせ。なんなら高津さんまで行きまひょか」 ここで喧嘩していては、多鶴子の車を
見失うと思ったので、豹一は、 「頼む、早くやってくれ!」と、下手に出た。この「頼....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
れも夜露を踏む草履の音を忍ばせるように、俯向き勝ちに辿って行った。月が明るいので
見失う虞《おそ》れはないと、元八も最初はわざと遠く距《はな》れていたが、往来へ近....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
いで鼻緒をすげてしまった頃には、二人のうしろ影はもう小半丁も遠くなっているのを、
見失うまいと眼を配《くば》りながら、長三郎は足早に追って行った。音羽の大通りへ出....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
ても主張すべき主義がない。主義というべきものはあるとしても、それが為めに私自身を
見失うまでにその為めに没頭することが出来ない。 やはり私はその長い廻り道の後に....
「地中魔」より 著者:海野十三
「あれなら追掛けてもよろしい」 「へえー」 二人はむきになって、貨物自動車隊を
見失うまいとした。暁の街をスピードを早めて追い掛けたが、こっちはボロ自動車である....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
、粗暴で悠々した態度で、街を漁り進んだ。 歩き方が乱調子になって来た青年の姿を
見失うまいとして、かの女は嫌でも青年に近く随いて歩かねばならなかった。そして人だ....
「青蛙堂鬼談」より 著者:岡本綺堂
うはずもないので、僕は誰の加勢を頼むわけにもいかない。薄暗いなかで彼のうしろ姿を
見失うまいと、梟のような眼をしながら唯ひとりで一生懸命に追いつづけたが、途中の坂....
「霊魂第十号の秘密」より 著者:海野十三
いしどこ》をけって立った。聖者は気高く後姿を見せて、しずかに歩む。博士はその姿を
見失うまいとして、後を追っていった。そのとき気がついたことは、新月は既に西の地平....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
隔てているにもかかわらず、ある時には同じ刹那に泳ぎ出して、一瞬間にすべてその影を
見失うことがある。信号が鳴らされた――マストの上にいる水夫やデッキにいるその仲間....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
がて倦いたらしく、睡気に誘われたように寝入ってしまった。 今度こそは彼女の姿を
見失うまいとコスモは決心して、その寝姿に眼を離さなかった。彼女の深い睡りを見つめ....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
辺から白峰が見える。霞たつ暖い日で、山は空と溶け合うて、ややともすればその輪廓を
見失うほど、杳かに、そして幽かなものであった。 二 甲州西山は、白....
「文化線の低下」より 著者:小川未明
、進歩も向上も見られるけれど、雷同し、隷属化された時は、自分自身の行くべき道すら
見失うものであります。 人生の進路も、生活の形態も、一元的に決定することはでき....
「耳香水」より 著者:大倉燁子
起ち上って、帰り仕度を始めました。地下室の階段を大勢の男女に押されながらK夫人を
見失うまいと注意しつつ外へ出ようとしました時、不意に早足になって夫人は馳け出して....