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見返す
「見返す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
見返すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
事でした。が、幸その眼の方でも、しばらくは懸命の憎悪を瞳に集めて、やはりこちらを
見返すようでしたが、見る見る内に形が薄くなって、最後に貝殻のような※《まぶた》が....
「或る女」より 著者:有島武郎
でもにらみつけた。女のほうでも葉子の仕打ちに気づいて、しばらくは意趣《いしゅ》に
見返すふうだったが、やがて一種の恐怖に襲われたらしく、干し物を竿《さお》に通しも....
「のんきな患者」より 著者:梶井基次郎
種変な口調で言い出したとき、いったいそれが本気なのかどうなのか、何度も母親の顔を
見返すほど妙な気持になった。それは吉田が自分の母親がこれまでめったにそんなことを....
「籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
しが杖柱《つえはしら》と取りすがるのは、お前ばかりである。一つには不実な男の顔を
見返すためと、二つには廓の苦を逃がれるために、どうぞわたしを請け出してくれと、彼....
「夫婦善哉」より 著者:織田作之助
している。につけても、想い出すのは、「やっぱり、蝶子はん、あんたのことや」抱主を
見返すと誓った昔の夢を実現するには、是非蝶子にも出世してもらわねばならぬと金八は....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
蔦は急に起上った身体のあがきで、寝床に添った押入の暗い方へ顔の向いたを、こなたへ
見返すさえ術なそうであった。 枕から透く、その細う捩れた背へ、小芳が、密と手を....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
京|住居をしておりましたが、何でも一旦微禄した家を、故郷に打っ開けて、村中の面を
見返すと申して、估券潰れの古家を買いまして、両三年|前から、その伜の学士先生の嫁....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
の上に佇んで、寂寞としてこの橋を眺める。橋はまた巨鯨の白骨のような姿で寂寞として
見返す。はだらはだらに射し下ろす春陽の下で。 なべて人の世に相逢うということ、....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
すっと座を立ち、正面、鼓の緒の欄干に立ち熟と視る時、図書、雪洞を翳して高く天守を
見返す、トタンに大入道さし覗きざまに雪洞をふっと消す。図書|身構す。大入道、大手....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
い浅黄の影が消える、と露の垂りそうな清い目で、同伴の男に、ト瞳を注ぎながら舞台を
見返す……その様子が、しばらく立停ろうと云うらしかった。 「鍋焼饂飩…」 と高....
「霧陰伊香保湯煙」より 著者:三遊亭円朝
ますから、治平も何うも見たような女だと思いながら、また見て居りますと、見られると
見返すもので、情が通ずるか先方でも頻りと治平の顔を見たり何か致して居ります。 ....
「小公女」より 著者:菊池寛
ありませんでした。かえって、自分を見つめている子供達が珍しいので、静かに皆の方を
見返すのでした。皆は何を考えているのかしら? 皆はミンチン先生が好きなのかしら?....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
、かれは少年時の甘い夢を見つづけている。しかもその夢の再現がまたかれを苦しめる。
見返すたびごとにその影像が無慈悲と思われるまでに鮮明の度を増す。鶴見にはすべてが....
「香魚と水質」より 著者:佐藤垢石
の臭みを持ち、骨が硬いために到底食膳にのせ得ないのであるが、秋水に泳ぐ頃となれば
見返すほどの食味となる。鰍の骨と肉も、水温と密接の関係を持つ。 鰍の族が三、四....
「金山揷話」より 著者:大鹿卓
覆われたこの辺りの風景が、まざまざと脳裡にうかんでくる。そのためかいま瞼をあけて
見返す車窓は、いっそう荒涼と眺めわたされた。それに一昨夜発ってきた東京は未だ晩秋....