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「覚えず〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

覚えずの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
日光小品」より 著者:芥川竜之介
社の片かげに寂然とすわっている老年《としより》の巫女を見ては、そぞろにかなしさを覚えずにはいられない。 私は、一生を神にささげた巫女の生涯《しょうがい》のさび....
或る女」より 著者:有島武郎
田川夫妻の前ということもはばからずに、自分では醜いに違いないと思うような微笑が、覚えず葉子の眉《まゆ》の間に浮かび上がった。事務長は小むずかしい顔になって振り返....
外科室」より 著者:泉鏡花
っとしている。動きゃあしないから、切っておくれ」 予はそのあまりの無邪気さに、覚えず森寒を禁じ得ざりき。おそらく今日《きょう》の切開術は、眼を開きてこれを見る....
春昼」より 著者:泉鏡花
ますが、うたゝ寐の、この和歌でござる、」 「その歌が、」 とこなたも膝の進むを覚えず。 「ええ、御覧なさい。其処中、それ巡拝札を貼り散らしたと申すわけで、中に....
薬草取」より 著者:泉鏡花
待って、莞爾と笑む、美しく気高き面ざし、威ある瞳に屹と射られて、今物語った人とも覚えず、はっと思うと学生は、既に身を忘れ、名を忘れて、唯九ツばかりの稚児になった....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
あり、ただ御身は髪黒く、顔白きに、我は頭蒼く、面の黄なるのみ。同一世の孤児よ、と覚えずほうり落ちた法師自身の同情の涙の、明の夢に届いたのである。 四辺を見ると....
灯明之巻」より 著者:泉鏡花
て、絵も模様も目には留まらぬさきに――せい……せい、と書いた女文字。 今度は、覚えず瞼が染まった。 銑吉には、何を秘そう、おなじ名の恋人があったのである。 ....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
吃驚して引込める時、引っかけて灰が立った。その立つ灰にも、留南木の香が芬と薫る。覚えず、恍惚する、鼻の尖へ、炎が立って、自分で摺った燐寸にぎょっとした。が、しゃ....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
びしに、油こそ惜しけれ、しかることは日中にするものぞと叫びぬ。 われを憎むとは覚えず、内に行くことをこそ好まざれ、外にて遊ぶ時は、折々ものくれたり。されどかの....
黒百合」より 著者:泉鏡花
も前のこと、場所も意外なり、境遇も変っているから、滝太郎の方では見忘れて、何とも覚えず、底気味が悪かった。 横町の小児が足搦の縄を切払うごときは愚なこと、引外....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
醜くい自分の姿――私は一と目見てぞっとして了いました。『モー結構でございます。』覚えずそう言って御免を蒙って了いましたが、この事は大へん私の心を落つかせるのに効....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
だ人肉のうめきと、争いとであった。さすがに霊界の天使達も、一時手を降すの術なく、覚えず眼を掩いて、この醜怪なる鬼畜の舞踊から遠ざかった。それは実に無信仰以上の堕....
森先生」より 著者:芥川竜之介
の先生は面の色日に焼け、如何にも軍人らしき心地したれど、謹厳などと云う堅苦しさは覚えず。英雄崇拝の念に充ち満ちたる我等には、快活なる先生とのみ思われたり。 又....
式部小路」より 著者:泉鏡花
で、そのままにして置きました。さあ、これが大変。」 「失火たかい。」と膝の進むを覚えず、火鉢を後に、先刻から摺って出て、聞きながら一服しようとする。心を得て、若....
活人形」より 著者:泉鏡花
が慕い斉眉物なれば、宇宙の鬼神感動して、仮に上※の口を藉りかかる怪語を放つらんと覚えず全身|粟生てり。まして得三高田等は、驚き恐れつ怪しみて、一人立ち、二人立ち....