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訥弁
「訥弁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
訥弁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「風の便り」より 著者:太宰治
惰の日々を送っている百万の同胞に、エジプト脱出の大事業を、「口重く舌重き」ひどい
訥弁《とつべん》で懸命に説いて廻ってかえって皆に迷惑がられ、それでも、叱ったり、....
「蜘蛛」より 著者:甲賀三郎
いとにかかわらず、おれには忍ぶべからざる侮辱である。しかし、おれのいじけた性質と
訥弁にたいする、彼のはなやかな性質と雄弁とは、おれを彼にたいして反抗を不可能なら....
「パウロの混乱」より 著者:太宰治
に思う。パウロは、神の子ではない。天才でもなければ、賢者でもない。肉体まずしく、
訥弁である。失礼ながら、今官一君の姿を、ところどころに於いて思い浮べた。四書簡の....
「柿の種」より 著者:寺田寅彦
これに反して、文士でも芸術家ないし芸人でも何か一つ腹に覚えのある人の講演には
訥弁雄弁の別なしに聞いていて何かしら親しみを感じ、底のほうに何かしら生きて動いて....
「殺人鬼」より 著者:浜尾四郎
「いま藤枝君が申す通り、私は藤枝君の手伝いをやつているものです」
われながら
訥弁だとひどく感じながら、私は美しい秋川嬢の前で、やつとこれだけをいつたが、なん....
「浮雲」より 著者:二葉亭四迷
だ完成《まとまっ》ていなかろうがどうだろうがそんな事に頓着《とんじゃく》はない、
訥弁《とつべん》ながらやたら無性に陳《なら》べ立てて返答などは更に聞ていぬ。文三....
「惜別」より 著者:太宰治
いる百万の同胞に向って、モオゼが、エジプト脱出の大理想を、『口重く舌重き』ひどい
訥弁で懸命に説いて廻ってかえって皆に迷惑がられ、それでも、叱ったり、なだめたり、....
「青年」より 著者:森鴎外
すというような処は少しもない。それかと云って、評判に聞いている雪嶺の演説のように
訥弁の能弁だというでもない。平板極まる中に、どうかすると非常に奇警な詞が、不用意....
「落第」より 著者:夏目漱石
行くだろうと投票をした時に、僕は理科へ行く者として投票された位であった。元来僕は
訥弁《とつべん》で自分の思って居ることが云えない性《たち》だから、英語などを訳し....
「平凡」より 著者:二葉亭四迷
》さんもお変りは有りませんか?」 「は。」 と矢張《やっぱり》固くなりながら、
訥弁《とつべん》でポツリポツリと両親の言伝《ことづて》を述べると、奥様は聴いてい....
「夜の靴」より 著者:横光利一
ムある美しい要点の受け応え、不鮮明な認識の流れはそのまま横に流して朦朧たらしめる
訥弁で、適度の要領ある次ぎの展開の緒を掴む鋭敏な探索力など、彼の政治力は数字と離....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
《ひざ》をすりあわせるようにして座りこんでいた。いつも鉱山《やま》のことになると
訥弁《とつべん》が能弁《のうべん》になる――というより、対手《あいて》がどんなに....
「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」より 著者:寺田寅彦
見するところである。これを何と形容したら適当であるか、例えばここに饒舌な空談者と
訥弁な思索者とを並べた時に後者から受ける印象が多少これに類しているかもしれない。....
「駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
高かった玉子とかいう芸妓で、千代子が生まれた時に世間では、あれは正木の子ではない
訥弁という役者の子だという噂が高く一時は口の悪い新聞にまでも謳われたほどであった....
「小説 円朝」より 著者:正岡容
てきた。おととい剃ったも今道心、ただ道心では分り申さぬ、と同時にこんな張りのある
訥弁《とつべん》の声《こわ》いろが、あとから耳許へ聞こえてきた、木の葉の合方、山....