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谷底
「谷底〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
谷底の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「犬と笛」より 著者:芥川竜之介
出て来ました。
ところが不思議な事には、それと同時に、雲で埋《うず》まっている
谷底から、一陣の風がまき起りますと、その風の中に何かいて、
「髪長彦さん。難有《....
「葱」より 著者:芥川竜之介
詩集」「松井須磨子《まついすまこ》の一生」「新朝顔日記」「カルメン」「高い山から
谷底見れば」――あとは婦人雑誌が七八冊あるばかりで、残念ながらおれの小説集などは....
「日光小品」より 著者:芥川竜之介
大谷川
馬返しをすぎて少し行くと大谷川の見える所へ出た。落葉に埋もれた石の上に腰をおろして川を見る。川はずうっと下の
谷底を流れているので幅がやっと五、六尺に見える。川をはさんだ山は紅葉と黄葉とにす....
「槍が岳に登った記」より 著者:芥川竜之介
くなって息がきれる。はっはっ言うたびに口から白い霧が出る。途中でふり向いて見ると
谷底まで黒いものがつづいてその中途で白いまるいものと細長いものとが動いていた。「....
「或る女」より 著者:有島武郎
いもかけなかった死と向かい合って、ひたすらに恐れおののいている、その姿は、千丈の
谷底に続く崕《がけ》のきわに両手だけでぶら下がった人が、そこの土がぼろぼろとくず....
「星座」より 著者:有島武郎
かった。……とうとうそのえらあい若者は、日本服の改良を仕遂げないうちに、無残にも
谷底へすべり落ちて死んでしまったんだ。なんぼう気の毒なことではないか」
醜《み....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
塞いで、炎のように光線が透く。その上から、日のかげった大巌山が、そこは人の落ちた
谷底ぞ、と聳え立って峰から哄と吹き下した。 かつ散る紅、靡いたのは、夫人の褄と....
「海異記」より 著者:泉鏡花
たりと天上まで高くなって、嶽の堂は目の下だ。大風呂敷の山じゃねえが、一波越すと、
谷底よ。浜も日本も見えやしねえで、お星様が映りそうで、お太陽様は真蒼だ。姉さん、....
「春昼」より 著者:泉鏡花
臥れて、もう帰ろうかと思う時、その火気を包んだ靄が、こう風にでも動くかと覚えて、
谷底から上へ、裾あがりに次第に色が濃うなって、向うの山かけて映る工合が直き目の前....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
は押被さっておりますし、行燈はもとよりその立廻りで打倒れた。何か私どもは深い狭い
谷底に居窘まって、千仞の崖の上に月が落ちたのを視めるようです。そう言えば、欅の枝....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
って、颯と屋根へ掛る中を、汽車は音もしないように静に動き出す、と漆のごとき真暗な
谷底へ、轟と谺する…… 「行っていらっしゃいまし……お静に――」 と私はつい、....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
、透通る錦を捧げて、赤棟蛇と言うだね、燃える炎のような蛇の鱗へ、馬乗りに乗って、
谷底から駈けて来ると、蜘蛛も光れば蛇も光る。」 と物語る。君がいわゆる実家の話....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
えて寂しいのも、再び見る、露に濡れた一叢の卯の花の水の栞をすると思うのも、いまは
谷底のように遠く、深い。ここに、突当りに切組んで、二段ばかり目に映る階段を望んで....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
む、さあ、承りましょう。」 「どうぞ、その、その前に先生、どこへか、人の居ない、
谷底か、山の中か、島へでも、巌穴へでも、お連れなすって下さいまし。もう、貴下にば....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
る影もなく掃滅せられ、夫婦骨肉の聖き羈は断たれ、幾千幾万の家族は、相率いて不幸の
谷底に蹴落され、大地の上は、至る所に屍の山を築く。しかも無理にその肉体からもぎ離....