貸間[語句情報] »
貸間
「貸間〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
貸間の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「お時儀」より 著者:芥川竜之介
影の見えない砂浜《すなはま》へ行った。これは珍らしいことではない。彼は一月五円の
貸間と一食五十銭の弁当とにしみじみ世の中が厭《いや》になると、必ずこの砂の上へグ....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
料亭を鎌倉に建てたのであったが商売不振の為め今年は母屋を交ぜた三棟四棟を避暑客の
貸間に当て、京都風の手軽料理で、若主人夫婦がその賄に当ろうと云うのであった。 ....
「河明り」より 著者:岡本かの子
いている三階建の、多少住み古した跡はあるが、間に合せ建ではないそのポーチに小さく
貸間ありと紙札が貼ってあった。ポーチから奥へ抜けている少し勾配のある通路の突き当....
「家」より 著者:島崎藤村
。お雪も笑わずにはいられなかった。豊世は、いずれ名古屋へ着いたら、日あたりの好い
貸間でも見つけて移る積りだと話して、いそいそと別れを告げて行った。 五月の末に....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
うのが夫婦で居た。 その突当りの、柳の樹に、軒燈の掛った見晴のいい誰かの妾宅の
貸間に居た、露の垂れそうな綺麗なのが……ここに緋縮緬の女が似たと思う、そのお千さ....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
を徴集したのち、一同を乗せてぶうと停止したところが、モンマルトルの山の下なるこの
貸間館のまえ。 ぞろぞろ降りる。夜番が横手の戸をあける。親分の先頭でMAIを含....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
で、家具付きのアパートメントをさがしに出て、ある閑静な町をとおると、窓に家具付き
貸間という札が貼ってある家を見つけたのだ。場所もわれわれに適当であると思ったので....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
に、慈恵院看護婦の姿を完全に定めた。「修道院としてはただ病舎を、室としては唯一の
貸間を、礼拝所としてはただ教区の会堂を、回廊としてはただ町の街路や病舎の広間を、....
「火の扉」より 著者:岸田国士
のは、自分ながらあきれるくらいである。 アパートとは名ばかりの、えたいの知れぬ
貸間を彼女は仲間の一人といつしよに宿にしている。その仲間の筒井レイ子という女は、....
「光は影を」より 著者:岸田国士
りを申し込んだが、三万円ならというので、しかたがなく、それだけ受けとつて、早速、
貸間探しをした。もちろん、それは、無理にきまつていた。ところが、遠矢幸造に前借り....
「雪の夜」より 著者:織田作之助
二人、はじめて別府へ来た晩のことが想い出されるのだった。船を降りた足で、いきなり
貸間探しだった。旅館の客引きの手をしょんぼり振り切って、行李を一時預けにすると、....
「日和下駄」より 著者:永井荷風
筋のはいった軍服のヅボンを穿《は》いておられたので、何の事はない、鴎外先生は日曜
貸間の二階か何かでごろごろしている兵隊さんのように見えた。 「暑い時はこれに限る....
「贋物」より 著者:葛西善蔵
が、しかしそれとてもたいしたことではないんです。兄さんたちさえ気にかけなければ、
貸間に置いてあるんで経済は別だと言えばそれまでの話なんだから……」 その晩だい....
「濹東綺譚」より 著者:永井荷風
たことから思合せると、起稿の日はそれよりも猶以前であった。草稿の末節は種田順平が
貸間の暑さに或夜同宿の女給すみ子を連れ、白髯橋の上で涼みながら、行末の事を語り合....
「つゆのあとさき」より 著者:永井荷風
通のカッフェーへ出ればよいので、市《いち》ヶ|谷《や》本村町《ほんむらちょう》の
貸間からぶらぶら堀端《ほりばた》を歩み見附外《みつけそと》から乗った乗合自動車を....