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質実
「質実〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
質実の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「運命」より 著者:幸田露伴
を上りて政を論ず。巍は遼州の人、気節を尚び、文章を能くす、材器偉ならずと雖も、性
質実に惟美、母の蕭氏に事えて孝を以て称せられ、洪武十七年|旌表せらる。其の立言|....
「家」より 著者:島崎藤村
に、何物を以ても満すことの出来ない心の空虚を充そうとしていた。 彼が探していた
質実な生活は彼の周囲に在った。先ず彼は眼を開いて、この荒寥とした山の上を眺めよう....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
ものへと進むに従って、しだいにその思索と体験とが深められ、その考え方は多様にかつ
質実となり、初めには裁いたものをも赦し、斥けたものをも摂り、曖昧なる内容は明確と....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
洒落にまた鑑札を請けて、以前のままの、お珊という名で、新しく披露をしました。」と
質実に話す。 「阪地は風流だね、洒落に芸者に出すなんざ、悟ったもんですぜ、根こぎ....
「大震火災記」より 著者:鈴木三重吉
かりません。この大変災を機会として、すべての人が根本に態度をあらためなおし、勤勉
質実に合理的な生活をする習慣をかため上げなければならないと思います。....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
いう主観句の短いものと看做せば説明のつかぬことはない。 この歌を味うと、内容に
質実的なところがあるが、声調が訥々としていて、沁み透るものが尠いので、つまりは常....
「安吾巷談」より 著者:坂口安吾
があったほかは、国土の貧しさと人口の多さによって、支配階級の武士すらも、もっぱら
質実剛健を旨とせざるを得なかったのである。 台湾、朝鮮、カラフトと明治以後の日....
「戯作者」より 著者:国枝史郎
伝は、草双紙、洒落本から足を抜き、教訓物や昔咄や「実語教稚講釈」こう云ったような
質実な物へ、努めて世界を求めて行った。これは手錠に懲りたからでもあるが、又馬琴の....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
の恋愛小説などが無いと言うので軽蔑していた矢先きだったので、老校長の苦心と、その
質実な心ばえとに強く打たれた。 私はこの勧工場で毎日番をしていて、遊ぶことの許....
「あるニュウ・フェイスへの手紙」より 著者:岸田国士
チーム・ワークがとれ、相互練磨の気勢をみせ、常に知的な話題に興味を集め、そして、
質実謙虚な風習を誇っているようにみえるのに、映画俳優の卵の組は、所属会社もまちま....
「役人の頭」より 著者:末弘厳太郎
で、再び「伝家のさび刀」をかつぎだしました。そうしてそれに「淳風美俗」とか「剛健
質実」とかいう名をつけて、これこそは国民を指導すべきわが国独特の目標であると唱え....
「人生三つの愉しみ」より 著者:坂口安吾
呂の豪奢の片鱗をとどめるほどの浴室もなく、大半は奥の細道の心境を旨とするかの如き
質実剛健ぶりで、亡国の相に縁遠いのは大慶の至りである。銀座に東京温泉なるものが開....
「地上」より 著者:島田清次郎
にもまれつつ、なおそれらの苦しみに打ち克って来た人間相互の間に存在する、深くて、
質実で、味わいの無限な感情である、と冬子は思った。同性においては知己となり、異性....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
第三日目――八郎が舞台に立った――その夜九時半頃、……結たての円髷に薄化粧して、
質実だが黒の江戸褄の、それしゃにはまた見られない、こうとうな町家の内儀風の、しゃ....
「単純化は唯一の武器だ」より 著者:小川未明
しくなかった。資本主義の波が、村々を襲って来たのは、それからである。この人達の、
質実、素朴な生活の有様を、今から思い起すと、何となしになつかしい気がするばかりで....