走らす[語句情報] »
走らす
「走らす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
走らすの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
眼を女将に向けながら、
「何」
と尻《しり》上がりに問い返した。
「そう早耳を
走らすとつんぼと間違えられますとさ」
と女将《おかみ》は事もなげに受け流した。....
「星座」より 著者:有島武郎
つ》いていた狐が落ちでもしたように。そしてきまり悪るげにそこにいた三人の顔に眼を
走らすと慌てて爪を噛みはじめた。
「渡瀬君まだいたんだね。僕はもし帰ってしまうと....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
の月見は八月の十五夜、今も都は芋芒を野にもとむるに及ばず、横丁の八百屋におさんを
走らすれば、穂芒の多少は好み次第、里芋も衣かつぎ芋も、栗も、枝豆も、走りを賞する....
「駆逐されんとする文人」より 著者:内田魯庵
逐されないでも済むかも知れないが、或は駆逐されても電車の恩愛に頼らないで自働車を
走らす事が出来るかも知れないが、メエターリンクの夢を難有がる専門文人にもなれず、....
「不尽の高根」より 著者:小島烏水
み込み、大沢照貞氏と、田富小学校長|輿石正久氏が加わり、自動車で八ヶ岳の高原へと
走らす。私がまだ米国に渡らぬ先に、甲府で山梨山岳会が設立せられ、講演会に引き出さ....
「油絵新技法」より 著者:小出楢重
さ断崖の大きさ地球の重さがある。モネの海はその地平線まで何|哩かある。本当に船を
走らす事が出来るだけの空間を持っている。 私は日本人の作品において空の複雑な調....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
戸の山吹も、美女の名の可懐い。 これは旧とても異りはなかった。しかしその頃は、
走らす車、運ぶ草鞋、いざ峠にかかる一息つくため、ここに麓路を挟んで、竹の橋の出外....
「フランダースの犬」より 著者:菊池寛
へんなにぎわいでした。てくてく歩く人、驢馬に乗る人、あるいは二輪馬車、四輪馬車を
走らす人、いずれも、お祭り気分で浮かれながらぞろぞろ行くのでした。もちろんその人....
「バークレーより」より 著者:沖野岩三郎
子大学ミルスカレッジがある。遠慮なくカレッジの庭を通りぬけて、三哩ばかり自動車を
走らすと、ハイツに着く。 ハイツとは詩人ウオーキン・ミラー翁の住んでいた旧邸で....
「或る秋の紫式部」より 著者:岡本かの子
れから斎を用意し隣へ持って行く。日はとっぷり暮れ、鉦磬と虫の声、式部は静かに筆を
走らす。) ――幕――....
「鼻に基く殺人」より 著者:小酒井不木
のが悦ばしい。獄舎の鉄窓をもれる月光のもとに、絞首台の幻影を掻きわけながらペンを
走らす犯罪日誌は、本人にとって聊かの悦びをも齎らさないであろう。然るに自分はどう....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
夢も覚めた思いも、大方この日が照る世の中のことではあるまい。 髯ある者、腕車を
走らす者、外套を着たものなどを、同一世に住むとは思わず、同胞であることなどは忘れ....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
。地の総銀一面に浮彫の波の中に、うつくしい竜宮を色で象嵌に透かして、片面へ、兎を
走らす。……蓋は黄金無垢の雲の高彫に、千羽鶴を透彫にして、一方の波へ、毛彫の冴で....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
よき栂の枯木を見つけて写生する。すぐ近くの笹の中では、藪鶯が一羽二羽、ここに絵筆
走らす旅人ありとも知らで、ささ啼きの声が忙しない。 池の茶屋に着いたのは一時半....
「知々夫紀行」より 著者:幸田露伴
寂びたり、人里は遠し、雨の小止をまたんよすがもなければ、しとど降る中をひた走りに
走らす。ようやく寺尾というところにいたりたる時、路のほとりに一つ家の見えければ、....