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跡形
「跡形〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
跡形の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
》をはるばるとながめやった。折り重なった鈍色《にぶいろ》の雲のかなたに夕日の影は
跡形もなく消えうせて、闇《やみ》は重い不思議な瓦斯《がす》のように力強くすべての....
「星座」より 著者:有島武郎
を移した。
清逸の心にある未練を残しつつその万花鏡《まんげきょう》のような花は
跡形もなく消え失《う》せた。
園ならばいい。あの純粋な園にならおぬいさんが与え....
「十八時の音楽浴」より 著者:海野十三
きりに悪どいふざけかたをしていた。しかしやがて二人の昂奮は大風に遭った霧のように
跡形もなく消えてしまった。そして二人は別々にものうい倦怠の中に吐息している自分自....
「水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
縮め海老のごとき状態に困臥しながら、なお気安く心地爽かに眠り得た。数日来の苦悩は
跡形も無く消え去った。ために体内新たな活動力を得たごとくに思われたのである。 ....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
が存在する如く私もまた永劫の中に存在する。私は点となって生れ出た。そして瞬く中に
跡形もなく永劫の中に溶け込んでしまって、私はいなくなるのだ。それも私は知っている....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
それが三月の舞台に上ったのを観ると、わたしは失望した。私が書いた部分はほとんど
跡形もないほど変っていた。私はそれを榎本君に話すと、榎本君は笑いながら「それだか....
「地軸作戦」より 著者:海野十三
なしであったというのです」 「なーるほど、ふんふんふん」 「しかし博士の部屋は、
跡形なくなってしまったので、博士はもうそこにはいられず、或るところへ移った」 「....
「宇宙の迷子」より 著者:海野十三
がつづいた。おそろしい影響であった。 カロチ教授たちは、みんな死滅してしまって
跡形もない。川上、山ノ井の二少年だけはさいわいにも一命を拾った。それは二少年は、....
「火星兵団」より 著者:海野十三
長さん。ガソリンに火がついて、たいへんはげしく燃えたため、骨もなんにも、すっかり
跡形なく焼けてしまったんではないのですか」
「ガソリンが燃えたくらいで、骨が
跡形....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
が知れず、音沙汰なし。親兄弟もある人物、出来る限り、手を尽くして捜したが、皆目|
跡形が分らんから、われわれ友だちの間にも、最早や世にない、死んだものと断念めて、....
「狂女」より 著者:秋田滋
なく、ただ悲しい夢ばかり見つづけていたのだろうか。それともまた、思想というものが
跡形もなく消え失せてしまって、流れぬ水のように、一ところに澱んだままになっていた....
「眠い町」より 著者:小川未明
幾日かの後「眠い町」にきました。けれども、いつのまにか昔見たような灰色の建物は
跡形もありませんでした。のみならず、そこには大きな建物が並んで、烟が空にみなぎっ....
「黒い塔」より 著者:小川未明
くしてしまいました。明くる日になると、一|面に海となっていました。もう、昔の街は
跡形もなかったのです。 風だけは、悲しい叫びをたてて海の上を吹いていました。小....
「希望」より 著者:小川未明
た、鉛色の朝となりました。浜辺にいってみると、すでに箱は波にさらわれたか、なんの
跡形も残っていません。 その後青年は、この話を人にしました。 「君は、夢を見た....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
うか。人間が万物の霊長だなんて威張っていても、たかだか七、八十年経てば、すっかり
跡形もなくなってしまうのでしょうか。実際そうだとすれば僅か七、八十年の人生は少々....