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蹴込み
「蹴込み〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
蹴込みの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
て通る、一台、艶やかな幌に、夜上りの澄渡った富士を透かして、燃立つばかりの鳥毛の
蹴込み、友染の背当てした、高台細骨の車があった。 あの、音の冴えた、軽い車の軋....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
い高台のところへ来て、その上に手を置き、吉左衛門はまたその前の羽目板に身を寄せ、
蹴込みのところに立ったままで、敷居の上と下とで言葉をかわしていた。吉左衛門のつも....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
衛門のこと)の病気を案じ顔な栄吉を見いだす。栄吉は羽目板の上の位置から、台の前の
蹴込みのところに立つ伊之助の顔をながめながら、長年中風を煩っているあの叔父がここ....
「足迹」より 著者:徳田秋声
はそうして奉公気じみたことを考えるのが、厭なようであった。 女が包みと行李とを
蹴込みに積んで、ある晩方向島の方へ送られて行くと、間もなくお鳥がやって来た。 ....
「黴」より 著者:徳田秋声
家へ来たのが、心持よかった。そして外へ出ると、時々|配けてもらった草花を、腕車の
蹴込みへ入れて帰って来た。中庭の垣根のなかには、いろいろのものが植えられた。中に....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
赤黒く、頬ひげ少しは白きもまじり、黒紬の羽織に新しからぬ同じ色の中山帽をいただき
蹴込みに中形の鞄を載せたり。呼び戻されてけげんの顔は、玄関に立ちし主人を見るより....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
でもねえことをしやがる」 折助どもをポカポカと殴り飛ばして、その一人を濠の中へ
蹴込みました。 「やあ、役割!」 と言って、折助はたあいもなく逃げてしまいました....
「突堤」より 著者:宮本百合子
と玉蜀黍《とうもろこし》を入れた重い縞の風呂敷包みを持たされた。その風呂敷包みを
蹴込みに入れ、私をのせた俥が桑畑の間の草道をまわって埃っぽい街道の上へ現れる。す....
「モスクワの辻馬車」より 著者:宮本百合子
るような調子である。御者特有の横目で日本女が先ず片手にさげていた一つの新聞包みを
蹴込みへのせ、それから自身車へのるのを見守り、弾機が平衡を得たところで、唇を鳴ら....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
「何んでも構わぬ、私は急ぐに……」と後向きに掴まって、乗った雪駄を爪立てながら、
蹴込みへ入れた革鞄を跨ぎ、首に掛けた風呂敷包みを外ずしもしないで揺っておく。 「....
「寄席と芝居と」より 著者:岡本綺堂
捨てる。その車を挽いて行った車夫が怪しんで強請りかけると、又作はおどろかず、車の
蹴込みの板を取って車夫をぶち殺して立ち去る。揃いも揃ってきびきびしているのはさす....
「祭りの夜」より 著者:豊島与志雄
がった。だいぶたって、お留さんが何かの用で、玄関の方へでてみると、俥屋はそこで、
蹴込みに腰かけて煙草を吸っている。なにも人の家の玄関先で客待ちをしなくても、とお....
「大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
り飛びかかり、顎を下から突き上げた。「ムー」と呻いて仆れるのを板戸をあけてポンと
蹴込みそのまま廊下を灯蔭灯蔭と表の方へ走って行く。…… ちょうどこの時分紋太郎....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
詰込むと、三頭の馬の背に縛しつけて、空になった漆桶や、不用の物を、すべて坑の中へ
蹴込み、きれいに土をかぶせてしまった。 「これでよし、これでよし。――まだ夜明け....
「旗岡巡査」より 著者:吉川英治
す」 と、いった。 「…………」 旗岡巡査は、何とも答えなかった。夫人が俥の
蹴込みからおりる姿をちらと見た刹那から旗岡巡査は何故か化石したようにそこの位置に....