»
躅
「躅〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
躅の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「外科室」より 著者:泉鏡花
。一日《あるひ》予は渠《かれ》とともに、小石川なる植物園に散策しつ。五月五日|躑
躅《つつじ》の花盛んなりし。渠とともに手を携え、芳草の間を出つ、入りつ、園内の公....
「鮨」より 著者:岡本かの子
痩せたうす紫の花房が雫のように咲き垂れている。庭石の根締めになっていたやしおの躑
躅が石を運び去られたあとの穴の側に半面、黝く枯れて火のあおりのあとを残しながら、....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
地で、すぐ上が荵や苔、竜の髯の石垣の崖になる、片隅に山吹があって、こんもりした躑
躅が並んで植っていて、垣どなりの灯が、ちらちらと透くほどに二、三輪|咲残った……....
「恐怖の口笛」より 著者:海野十三
よりも高い笹藪がつづいていて、ところどころに小さな丘があり、そこには八手や五月躑
躅が密生していて、隠れん坊にはこの上ない場所だったけれど、まるで谷間に下りたよう....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
ったく美しい部分があった。そしてかの女は規矩男と共に心楽しく武蔵野を味わった。躑
躅の古株が崖一ぱい蟠居している丘から、頂天だけ真白い富士が嶺を眺めさせる場所。あ....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
山にもある習いで、四季ともに花が絶えないので此の名が伝わったのでしょう。今は米躑
躅の細かい花が咲いていました。 日本武尊にならって、わたしもここから引っ返しま....
「薬草取」より 著者:泉鏡花
れがないと凌げませんほど、水の少い処ですから、菖蒲、杜若、河骨はござんせんが、躑
躅も山吹も、あの、牡丹も芍薬も、菊の花も、桔梗も、女郎花でも、皆一所に開いていま....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
町の、壁の肉も、柱の血も、そのまま一落の白髑髏と化し果てたる趣あり。 絶壁の躑
躅と見たは、崩れた壁に、ずたずたの襁褓のみ、猿曵が猿に着せるのであろう。 生命....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
踞っていて、いま一度に立揚ったのであるが、ちらりと見た時は、下草をぬいて燃ゆる躑
躅であろう――また人家がある、と可懐しかった。 自動車がハタと留まって、窓を赤....
「獄中消息」より 著者:大杉栄
ラと氷店の看板さえも見える。世はいつの間にか夏に近づいたのだね。途で四谷見附の躑
躅を見た。桃散り桜散り、久しく花の色に餓えたりし僕は、ただもう恍惚として酔えるが....
「恒藤恭氏」より 著者:芥川竜之介
本を読みし事も少からず。恒藤の描きし水彩画中、最も僕の記憶にあるものは冬枯れの躑
躅を写せるものなり。但し記憶にある所以は不幸にも画の妙にあらず。躑
躅だと説明され....
「火薬庫」より 著者:岡本綺堂
よって夜食の御馳走になって、それから下座敷の広間に案内されると、床の間には白い躑
躅があっさりと生けてあるばかりで、かの三本足の蝦蟆将軍はどこへか影をひそめていた....
「郊外生活の一年」より 著者:岡本綺堂
「郊外も悪くないな」と、わたしはまた思い直した。 五月になると、大久保名物の躑
躅の色がここら一円を俄に明るくした。躑
躅園は一軒も残っていないが、今もその名所の....
「磯部の若葉」より 著者:岡本綺堂
い葉は枝もたわわに伸びて、軽い風にも驚いたように顫えている。その他には梅と楓と躑
躅と、これらが寄集って夏の色を緑に染めているが、これは幾分の人工を加えたもので、....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
され、軈てまた新たなる蟻の塔が此の無人の境に建設されてゆく。 峰頂を踏んで、躑
躅や山吹、茨などの灌木の間を縫うて行くことは、疲労を忘れしめるほどの愉快を感ずる....