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身も世もない
「身も世もない〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
身も世もないの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「身投げ救助業」より 著者:菊池寛
婆は十八になる娘を救うたことがある。娘は正気がついて自分が救われたことを知ると、
身も世もないように泣きしきった。やっと巡査にすかされて警察へ同行しようとして橋を....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
にとって、お調べくださりませ」 いいつつ目をしばたたきながら、孫思うご後室は、
身も世もないというように、老いのしずくを払い落としました。無理はない。小町娘の愛....
「暗黒公使」より 著者:夢野久作
、夫が何かの原因で自殺の決心を致しておりますのを悟りましたので、あまりの悲しさに
身も世もない気持になりまして、それならば一緒に外国に逃れてはどうかとすすめました....
「絵姿」より 著者:渡辺温
前の鴬の唄声のように、やさしく澄んでいるのだった。 ドリアンは、生れてはじめて
身も世もない恋慕の思いに胸をかきみだされた。彼女の名前をシビル・ヴェンと云った。....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
、若いたましいを嬌殺《きょうさつ》しないではおかないものがあった。栄三郎は、つと
身も世もない歓喜《よろこび》が背筋を走るのを覚えつつ、
「ま、はいりましょう――....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
役立ったのだった。
その父、今や亡《な》し矣《い》――かなしみの涙におぼれて、
身も世もない萩乃は、じぶんの座敷にひそかにたれこめて、侍女のすすめる白絹の葬衣に....
「人魚謎お岩殺し」より 著者:小栗虫太郎
故なら、6と9と組み合わせた形は、胎内における双胎児のそれではないか。まったく、
身も世もないあの烈しい相剋のなかで、静かに天鵞絨のうえを滑ってゆく思考の車があっ....
「魔都」より 著者:久生十蘭
らあんな事をいうんじゃなかった。ああ、どうしようどうしよう」
と身体を押揉んで
身も世もないように愁嘆する体だったが、やがてキッと顔をあげると、
「こんなことを....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
れたその芸者は、ハッと藤波のほうへ振りかえると、ズルズルと崩れて、畳に喰いついて
身も世もないように泣き出した。 「顔にも似げない、ひでえことをするじゃアねえか。....
「顎十郎捕物帳」より 著者:久生十蘭
ハタとうちかけ、両手を掻きいだくようにして数負の胸に喰いつくと、ワッと声をあげて
身も世もないように泣き沈んでしまった。 「……数負さま、数負さま。……あなたまで....
「あなたも私も」より 著者:久生十蘭
だったり、愛一郎にすこしでもよく思われたいなどと考えているのだったら、この場面は
身も世もない辛《つら》いものになったにちがいない……が、そうではないので、まだし....
「キャラコさん」より 著者:久生十蘭
夫人はハンカチを絞るほどの涙を流し、 「ゆるしてね、ゆるしてちょうだい」 と、
身も世もないように嘆くのである。 キャラコさんは槇子がかあいそうで、どうしてい....
「ある恋の話」より 著者:菊池寛
、 『やあ! 染之助さん、芝居の方はもう閉場ましたかい』と、云うじゃないか。私は
身も世もないように失望してしまいました。染之助の美しさは、舞台の上だけのまぼろし....
「三国志」より 著者:吉川英治
悲鳴を聞いた。 背の処女は、父の体に爪を立てんばかりしがみついた。ひいッ! と
身も世もない声を二度ほどあげた。 猛然、赤兎馬は悍気立つ。 ――だが、呂布も....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
おあげ。かわいそうに、お内儀は、良人のおまえさんが、どうなったかと、それもまた、
身も世もない心配らしいよ」 せきたてて、自分は自分の用に立ち去った。 雨露次....