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轡虫
「轡虫〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
轡虫の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「千鳥」より 著者:鈴木三重吉
がない。廊下へ出て、のこのこ離れの方へ行ってみる。麓の家で方々に白木綿を織るのが
轡虫が鳴くように聞える。廊下には草花の床が女帯ほどの幅で長く続いている。二三種の....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
渡るのを聞きながら、庫裡の八畳の縁側に、和尚さんと酒を飲んだ。夜はもう寒かった。
轡虫の声もかれがれに、寒そうにコオロギが鳴いていた。 秋は日に日に寒くなった。....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
綴る。楢茸、湿地茸も少しは立つ。秋はさながらの虫籠で、松虫鈴虫の好い音はないが、
轡虫などは喧しい程で、ともすれば家の中まで舞い込んでわめき立てる。今は無くなった....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
よがしの罪のない誇りを抱く手あいもあるからであろう。 虫と河鹿 松虫、鈴虫、
轡虫、さては草雲雀、螽斯なんど、いずれ野に聞くべきものを美しき籠にして見る都びと....
「青年」より 著者:森鴎外
褌を出している。その女が「いらっしゃい」と大声で云って、一寸こっちを見ただけで、
轡虫の鳴くような声で、話をし続けているのである。 二階は広くてきたない。一方の....
「太十と其犬」より 著者:長塚節
えるカンテラの焔が微かに動き乍ら蚊帳を覗て居る。ともし灯を慕うて桐の葉にとまった
轡虫が髭を動かしながらがじゃがじゃがと太十の心を乱した。太十は煙草を吸おうと思っ....
「二つの家を繋ぐ回想」より 著者:宮本百合子
を抜けた。 H町の通りは、相変らず暗い。ずっと右手に続いた杉林の叢の裡では盛に
轡虫が鳴きしきり、闇を劈くように、鋭い門燈の輝きが、末拡がりに処々の夜を照して居....
「やもり物語」より 著者:寺田寅彦
後自分は立って雨戸を一枚あけて庭を見た。霧のように細かな雨が降っている。何処かで
轡虫の鳴くのが静かな闇に響く。夢から醒めたような心持である。戸袋のすぐ横に、便所....
「祭」より 著者:寺田寅彦
上等がかえると御てらしが消えて御神燈の灯がバチバチと鳴る。座敷がしんとして庭では
轡虫が鳴き出した。居間の時計がねむそうに十時をうったから一通り霊前を片付けて床に....
「東上記」より 著者:寺田寅彦
もいびきの音に変って、向うのせなあが追分を歌い始むれば甲板に誰れの持て来たものか
轡虫の鳴き出したるなど面白し。甲板をあちこちする船員の靴音がコツリ/\と言文一致....
「雁」より 著者:森鴎外
さあ、ずっとお這入なさいよ。檀那はさばけた方だから、遠慮なんぞなさらないが好い」
轡虫の鳴くような調子でこう云うのは、世話をしてくれた、例の婆あさんの声である。 ....
「駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
は初めて荒漠なあたりの光景に驚かされた、かすかな深夜の風が玉蜀黍の枯葉に戦いで、
轡虫の声が絶え絶えに、行く秋のあわれをこめて聞えて来る。先刻、目黒の不動の門前を....
「がちゃがちゃ」より 著者:香倶土三鳥
きな露をたくさんにそこいらの草の上に撒いておやりになりました。 ところへ一匹の
轡虫が飛び込んで来ました。 「何だ貴様たちは! おれを仲間外れにして音楽会をやる....