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辛うじて
「辛うじて〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
辛うじての前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
か。」 「ううむ、」 と頭を掉ったので、すっと立って、背後の肱掛窓を開けると、
辛うじて、雨落だけの隙を残して、厳しい、忍返しのある、しかも真新い黒板塀が見える....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
刺戟するのに因るのではないか。私はよくこの苦々しい悒鬱を知っている。それは人間が
辛うじて到達し得た境界から私が一歩を退転した、その意識によって引き起されるのだろ....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
して彼をユダヤ教徒仲間から駆逐したのである。その後は光学用のレンズを磨いたりして
辛うじて生計を営みながら、彼の大規模の哲学的著述を創造した。 スペンサーがこれ....
「眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
ほかに手水鉢がないから、洗面所の一つを捻ったが、その時はほんのたらたらと滴って、
辛うじて用が足りた。 しばらくすると、しきりに洗面所の方で水音がする。炬燵から....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
れない。 僥倖に、白昼の出水だったから、男女に死人はない。二階家はそのままで、
辛うじて凌いだが、平屋はほとんど濁流の瀬に洗われた。 若い時から、諸所を漂泊っ....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
に、その頃、ある一団の、取留めのない不体裁なその日ぐらしの人たちの世話になって、
辛うじて雨露を凌いでいた。 その人たちというのは、主に懶惰、放蕩のため、世に見....
「古狢」より 著者:泉鏡花
間の皺が裂けるかと思う時、ひいても離れなかった名古屋の客の顔が、湯気を飛ばして、
辛うじて上るとともに、ぴちぴちと魚のごとく、手足を刎ねて、どっと倒れた。両腋を抱....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
くるくると玉に廻って、生命の数珠が切れそうだった。が、三十分ばかり、静としていて
辛うじて起った。――もっともその折は同伴があって、力をつけ、介抱した。手を取って....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
、五つ紋の雪びたしは一層あわれだ、しかも借りものだと言ったっけかな。」 「春着に
辛うじて算段した、苦生の一張羅さ。」 「苦生?……」 「知ってるじゃないか、月府....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
すます高潮して来る厳粛の感に堪えないように、なおも言葉をつづけた。 「死の牙から
辛うじて救われた、哀れなる人間よ。ローマ人はお前がここに留まることを欲しない。お....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
もようよう判然と、蚊帳の緑は水ながら、紅の絹のへり、かくて珊瑚の枝ならず。浦子は
辛うじて蚊帳の外に、障子の紙に描かれた、胸白き浴衣の色、腰の浅葱も黒髪も、夢なら....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
きて参ったのでございます。で、私どもに向って身上噺をせいと仰ッしゃるのは、言わば
辛うじて治りかけた心の古疵を再び抉り出すような、随分惨たらしい仕打なのでございま....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
くら俳諧師だといって、昼顔の露は吸えず、切ない息を吐いて、ぐったりした坊さんが、
辛うじて……赤住まで来ると、村は山際にあるのですが、藁葺の小家が一つ。伏屋貝かと....
「茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
もすると辷らせようとする。一二尺はおろか時によると二三尋も辷り落つることがある。
辛うじて木株や松の根方などで踏み止まる。踏み止まるというより其処で支えられるので....
「戦争史大観」より 著者:石原莞爾
りであったが果さなかった。正月に入って主として出張先の宿屋で書きつづけ二月十二日
辛うじて脱稿した。 二月末高木清寿氏来訪、原稿をお貸ししたところ、執拗に出版を....