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「辛くも〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

辛くもの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
義血侠血」より 著者:泉鏡花
なりて、ただ一秒ののちを危ぶめり。 七、八町を競争して、幸いに別条なく、馬車は辛くも人力車を追い抽きぬ。乗り合いは思わず手を拍《う》ちて、車も憾《うご》くばか....
富士」より 著者:岡本かの子
し》いてそれらしいものを娘の言葉の中から捕捉するなら娘がいったいくたたびか迎える辛くも新鮮な青春、かくて遂《つい》に老ゆることを知らずして苦しくも無限に華やぎ光....
心中浪華の春雨」より 著者:岡本綺堂
くためにこの土地を立ち退くのが六三郎の身の為でもあろうと考えた。 他国の奉公は辛くもあろうが、そこが辛抱である。石に喰い付いても我慢しなければ男一匹とはいわれ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
所のさわぎは一と通りでないのを、勤番支配の役人どもが叱ったり賺《すか》したりして辛くも取り鎮めているのである。子供たちは身分に応じて羽二重の黒紋付の小袖を着て、....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
だけを残して、建物全体がくずれ落ちている。なかには傾きかかったままで、破れた壁が辛くも支えられているのもある。家の大部分が黒く焦げながら、不思議にその看板だけが....
ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
考えこんでいた。もうここで敗北して発狂するか、それとも思いがけないアイデアを得て辛くも常人地帯に踏みとどまるか。 「あ、――」 夫人は暗闇のなかに、一声うめい....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
大国主神様からのお神使なのでございます。私はこのお方の一と方ならぬ導きによりて、辛くも心の闇から救い上げられ、尚おその上に天眼通その他の能力を仕込まれて、ドーや....
異妖編」より 著者:岡本綺堂
であったが、吹かれて、吹きやられて、ややもすれば吹き飛ばされそうになるのを、彼は辛くも踏みこたえながら歩いた。滝のようにそそぎかかる雨を浴びて、彼は骨までも濡れ....
取舵」より 著者:泉鏡花
色なりき。 元来|伏木直江津間の航路の三分の一は、遙に能登半島の庇護によりて、辛くも内海を形成れども、泊以東は全く洋々たる外海にて、快晴の日は、佐渡島の糢糊た....
取返し物語」より 著者:岡本かの子
下され』 おさき『は、は。はい』 蓮如『いや、思わずきつい言葉を放って、さぞ聞き辛くもあったであろう。許して呉りゃれ。何事も思うに足らぬは此の世の常。お互いにお....
小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
は小声であっと叫んだ。彼の片足は朽ちた床を蹈みぬいて、あやうく尻餅を搗こうとして辛くも蹈みとどまったのであった。その床の裂れ目からは枯れたすすきが長い穂を出して....
二階から」より 著者:岡本綺堂
る腹の児を抱えて、再び奉公先を探した。探し当てたのが私の家であった。彼女としては辛くもあったろう、苦しくもあったろう、悲しくもあったろう。気心の知れない新しい主....
淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
並の町家を下目に見ていた。世間並のお世辞上手な利口者なら町内の交際ぐらいは格別|辛くも思わないはずだが、毎年の元旦に町名主の玄関で叩頭をして御慶を陳べるのを何よ....
穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
たところ、案内者も、今回が初対面、岩角に縋り綱を手繰り、または偃松を握りなどし、辛くも、連稜の最低部=槍と穂高の交綏点についた。高さは約二千六百八十米突。此処で....
飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
ると云うことは、殆ど不可能であった。彼は左の手に蝋燭を持ち、右の手に岩を抱いて、辛くも其身を支えているのであるから、到底燐寸を擦るべき余裕は無い。迂濶に手を放せ....