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「辷り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

辷りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
お律はこう云い終ると、頭の位置を変えようとした。その拍子に氷嚢《ひょうのう》が辷り落ちた。洋一は看護婦の手を借りずに、元通りそれを置き直した。するとなぜか※《....
西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
ル・クロオスの上に、行儀よく並んでいる皿やコップが、汽車の進行する方向へ、一時に辷り出しそうな心もちもする。それがはげしい雨の音と共に、次第に重苦しく心をおさえ....
婦系図」より 著者:泉鏡花
案の(羊飼。)と云う姿。 お妙は玄関|傍、生垣の前の井戸へ出て、乾いてはいたが辷りのある井戸|流へ危気も無くその曲った下駄で乗った。女中も居るが、母様の躾が可....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
はいなかった。そして或る時には、烏が鵜の真似をするように、罪人らしく自分の罪を上辷りに人と神との前に披露もした。私は私らしく神を求めた。どれ程完全な罪人の形に於....
朱日記」より 著者:泉鏡花
の峰を越すと、あの見霽しの丘へ出る。……後は一雪崩にずるずると屋敷町の私の内へ、辷り込まれるんだ、と吻と息をした。ところがまた、知ってる通り、あの一町場が、一方....
海異記」より 著者:泉鏡花
て行った、どこかで魚の目が光るようによ。 おらが肩も軽くなって、船はすらすらと辷り出した。胴の間じゃ寂りして、幽かに鼾も聞えるだ。夜は恐ろしく更けただが、浪も....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
の、ぼろぼろと朽木のようにその満月が崩れると、葉末の露と一つになって、棟の勾配を辷り落ちて、消えたは可いが、ぽたりぽたり雫がし出した。頸と言わず、肩と言わず、降....
唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
ように、伸上って、お道さんが鍵を合せ合せするのが、あせるから、ツルツルと二三度|辷りました。 (ああ、ちょっと。) と若奥様が、手で圧えて、 (どうぞ……それ....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
冷い汗。 さてもその夜は暑かりしや、夢の恐怖に悶えしや、紅裏の絹の掻巻、鳩尾を辷り退いて、寝衣の衣紋崩れたる、雪の膚に蚊帳の色、残燈の灯に青く染まって、枕に乱....
トロッコ」より 著者:芥川竜之介
は直に飛び乗った。トロッコは三人が乗り移ると同時に、蜜柑畑の※を煽りながら、ひた辷りに線路を走り出した。「押すよりも乗る方がずっと好い」――良平は羽織に風を孕ま....
蜜柑」より 著者:芥川竜之介
めさせたのに相違なかったのである。 しかし汽車はその時分には、もう安々と隧道を辷りぬけて、枯草の山と山との間に挟まれた、或貧しい町はずれの踏切りに通りかかって....
春昼後刻」より 著者:泉鏡花
」 一散に遁げもならず、立停まった渠は、馬の尾に油を塗って置いて、鷲掴みの掌を辷り抜けなんだを口惜く思ったろう。 「私。」 と振返って、 「ですかい、」と言....
三枚続」より 著者:泉鏡花
(何某。)とかの筆を持った一人が声を懸けると寝台の上に仰向けになっていたのは、辷り落ちるように下りて蹌踉と外科室へ入交る。 同時に医学士に診察を受けていた貴....
式部小路」より 著者:泉鏡花
かると、愛吉、前へ立って、膠が放れたようだったが、どどどど、どんというと四五段|辷り落ちた。 (危い、) と婆さんが段の中途でいった時、 (危いよ、) とい....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
歩踏んで行く草鞋をややもすると辷らせようとする。一二尺はおろか時によると二三尋も辷り落つることがある。辛うじて木株や松の根方などで踏み止まる。踏み止まるというよ....