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近火
「近火〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
近火の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
れるくらいである。彼等は申し合せたごとく、素足に股引《ももひき》を高くまくって、
近火の手伝にでも行きそうな風体《ふうてい》に見える。彼等は主人の前にならんだぎり....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
のうちに一度二度、時によると三、四度もつづいて、一つばんもある。二つばんもある。
近火の摺りばんを滅多打ちにじゃんじゃんと打ち立てることもある。町内ばかりでなく、....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
から尋ねんのだ。こんな稼業だから、暇が無い。行通はしないでも、居処が分らんじゃ、
近火はどうする! 火事見舞に町内の頭も遣らん、そんな仲よしがあるものか、薄情だよ....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
とでわかったことだが、豪徳寺東よりの軍の材木置場が燃えているせいだった。 最も
近火だった南の高階さんの向こうの火も余燼だけとなった。 一同相寄り「まあよかっ....
「楢重雑筆」より 著者:小出楢重
本へ帰る旅費までも含まれているのですから少なからず弱りましたね。オテルへ帰ると、
近火でもあったように見舞いに集まるものがあるやら騒ぎです。しかし何しろ消え去った....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
かくれたよ。 惜い事をした。その巾着は、私が東京へ行っていた時分に、故郷の家が
近火に焼けた時、その百人一首も一所に焼けたよ。」 「まあ……」 とはかなそうに....
「鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
見定め、高声にその方角を知らせ、そして板木を叩いた。鎮火すると鐘を鳴らした。最も
近火で、藩邸も危いという時には鐘と板木とあえ交ぜに打つことになっていた。その非常....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
もはいりはしない。なんだか妙に、賑《にぎ》やかにさびしく、興奮した顔というのか、
近火へでも駈けつけるように、誰も話しあいもしないで、すたすたと、各自《めいめい》....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
あって、その力はよく私を圧伏し得るのであった。 部屋のなかの青白い空気は、今や
近火でもあるように紅くなって、かの幼虫の群れは火のなかに棲む物のようにきらきらと....
「明治開化 安吾捕物」より 著者:坂口安吾
のない晩だから三四軒焼きこがして食いとめた。アンマ宿は通りを一ツ距てていたので、
近火だったが、被害はない。 弁内はヤジ馬や火消が退散して、深夜の静けさに戻るま....
「一商人として 」より 著者:相馬愛蔵
静寂を破って鳴り出しました。遠方は一つばん、隣りの区は二つばん、区内は三つばん、
近火ならば摺りばんといって、けたたましくじゃんじゃんじゃん続けざまに鳴るのでした....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
る割合ですから、町家が火事を重大視した如く、武家もまた戦場のように重く視ました。
近火の場合には武家も町家も豪家になると、大提灯または高張りを家前なり、軒下に掲げ....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
抜萃のものばかりで、張合のないことでした。 始めの下宿は二階のある家でしたが、
近火があったので、学校に近い平家の下宿に移りました。そんな世話は皆次兄がなさいま....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
火災即乱、乱即火災 「すわ」といった心理がすぐ手伝う。 まして、執権御所の
近火とあっては、六浦、腰越の遠くからさえ、この夜、駒にムチを当てた武士が少なくな....
「べんがら炬燵」より 著者:吉川英治
。裸足で土がふみとうござる」 「ご尤もじゃ。御当家はお庭も広し、品川の海も一望。
近火のせつは、各※を庭へ集める御規則ゆえ、火事でもあれば、庭を、御案内いたそうも....