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逸民
「逸民〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
逸民の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「二老人」より 著者:国木田独歩
もいやがられもせず勤め上げて来たのだ。もはやこうなれば、わしなどはいわゆる聖代の
逸民だ。恩給だけでともかくも暮らせるなら、それをありがたく頂戴《ちょうだい》して....
「虞美人草」より 著者:夏目漱石
ついた丸い手を置く。 「何でもありませんよ」 「何でもない本を読むなんて、天下の
逸民だね」 「どうせ、そうよ」 「手を放したって好いじゃないか。まるで散らしでも....
「吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
んな事をしろと書いてあるのか知らん。要するに主人も寒月も迷亭も太平《たいへい》の
逸民《いつみん》で、彼等は糸瓜《へちま》のごとく風に吹かれて超然と澄《すま》し切....
「趣味の遺伝」より 著者:夏目漱石
《あいだ》に起臥《きが》して書斎以外にいかなる出来事が起るか知らんでも済む天下の
逸民《いつみん》である。平生戦争の事は新聞で読まんでもない、またその状況は詩的に....
「運命」より 著者:幸田露伴
て甚だ多きを致す。衛承芳が古風一首、中に句あり、曰く、 古来 馬を叩く者、 采薇
逸民を称す。 明の徳 ※ぞ周に遜らん。 乃ち其の仁を成す無からんや。 と。劉秉忠....
「柿の種」より 著者:寺田寅彦
者はそうである。 そうでないものは、英雄と超人と、そうして浮気な道楽者の太平の
逸民とである。 俳諧の道は、われわれをアウトマーテンの境界から救い出す一つの、....
「戦場」より 著者:夢野久作
、技芸に、経済政策に、模範的の進取精神を輝かして、世界を掠奪せむとしている吾々独
逸民族に対して、卑怯、野蛮な全世界の未開民族どもが、あった限りの非人道的な暴力を....
「娯楽論」より 著者:戸坂潤
真只中であろうと、要するに社会的関心から個人的関心の内部へ逃避することだ。天下の
逸民とは、自分の方も社会に対して何の要求も持ち出さぬ代りに、社会の方でも自分をソ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
を窮《きわ》め、博識と大通のあまり、人を茶に浮かして興がることに生きている一代の
逸民。
つまり、こんなふうに、わが道庵先生を買いかぶってしまったればこそ、この....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
川に由て作られたのは争われない。 当時の官報局は頗る異彩があった。局長が官界の
逸民たる高橋健三で、翻訳課長が学界の隠者たる浜田健次郎、その下に古川常一郎、陸実....
「古寺巡礼」より 著者:和辻哲郎
させたのかも知れないと思われるが、――それをわれわれは自分たちと全然縁のない昔の
逸民の空想だと思っていた。しかるにその夢想を表現した山村の寺に面接して見ると、わ....
「民族優勢説の危険」より 著者:新渡戸稲造
治的人類学という雑誌を編纂《へんさん》して、仏人ゴビノーという曲学者より聞いた独
逸民族優勢説をかつぎ出し、世界に最も優秀なる民族はゲルマン人種であると力説し、一....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
を鼻にかけ、世の中をただ威張って横に歩くのを見栄にしている無産の僻み者か、一種の
逸民と認めて、それに反感を抱いている石工だの土工だのという労働者たちが、 「殺っ....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
縁のない世界の人間だ、親代々の財産をだいじに抱えて、時勢のそとに遊んでいる上等な
逸民という者だろう)
退屈はやがて、気懶いものを誘ってくる。懶気は禁物と誡めて....
「河豚」より 著者:吉川英治
ば、河豚もまた国力に関わりがあると云える。これで毒がなかったらなどという望みは、
逸民の慾だ、ちり鍋の春菊が赤くなった頃によく出る囈言である。....