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遍し
「遍し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
遍しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「行人」より 著者:夏目漱石
の真面目《まじめ》な眉《まゆ》と眼の光とを認めた。
自分は家を出てから、まだ一
遍しか家《うち》へ行かなかった。その折そっと母を小蔭《こかげ》に呼んで、兄の様子....
「門」より 著者:夏目漱石
とん》の上へ起き直った。御米は小声で先刻《さっき》からの様子を話した。 「音は一
遍した限《ぎり》なのかい」 「だって今したばかりなのよ」 二人はそれで黙った。....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
る、銅盂《どうう》を以て酪を盛る、竜を中に置き、上座より下に至りてこれを行くこと
遍し、すなわち化し去る、年すなわち一たび出づ、法顕また親しく見る〉。 ある蛇ど....
「一本の花」より 著者:宮本百合子
云って来たって行きませんよ、五月蠅くてしようがありゃしない」 すると、まだ四五
遍しか会っていなかった朝子を顧み、大平は、敏感な顔面筋肉の間から、濃やかな艶のあ....
「支那米の袋」より 著者:夢野久作
一ツ足りねえと思うんだがナア……みんなは、おらが三人担いだというけんど、おらあ二
遍しけあ階子段を昇らねえんだがなあ……」 その声と言葉付きを聞いた時に、妾は又....
「詩の原理」より 著者:萩原朔太郎
音楽と美術によって代表されてる、この著るしい両極的の対照は、他の一切の芸術に普
遍して、主観的のものと客観的のものとを対照づけてる。即ち主観的なる一切の芸術は、....
「婦人の創造力」より 著者:宮本百合子
一つの時代まで生き切ることが出来ます。私どもの命はたった一遍です。しかもたった一
遍しかない命を私どもはあれだけ怖い空襲などでやっと拾って来ているのです。しかもい....
「田七郎」より 著者:田中貢太郎
ている者は皆知名の士であった。ある夜、夢に人が来ていった。 「おまえは交游天下に
遍しというありさまだが、皆|濫交だ。ただ一人|患難を共にする人があるのに、かえっ....
「獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
ランカがそれ丈くりかえすということだよ、とおっしゃるでしょうね。 わたしに百万
遍しわん棒と云っても、私はニコついているだけよ。しかし、ブランカは自分の人生をす....
「宝島」より 著者:佐々木直次郎
恐しい罵り言葉を吐いて彼は躓きながら立去り、砂地をやっとのことで下って、四遍か五
遍しくじった後に、休戦旗を持った男に助けられて柵壁を越すと、瞬く間に樹立の中へ姿....
「一商人として 」より 著者:相馬愛蔵
中至るところで釈尊の誕生を祭りました。これはもう仏教徒だけの仕事でなく、一般に普
遍して民衆的行事の一つとなっていたのです。ちょうどクリスチャンでなくとも十二月二....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
した時、玄白斎は、大声に
「是の如く、観ずる時、当《まさ》に、縛字を一切の身分に
遍して、その毛孔中より甘露を放流し、十方に周
遍し、以て一切衆生の身に灑《そそ》が....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
にこそ遮られぬ光なのであります。 「光明、十方世界を照らす」「光明、河砂のごとく
遍し」「光明、日月を勝過す」等の言葉があります。 教えられてみれば、なるほど、....
「三国志」より 著者:吉川英治
武士たちは剣に手をかけながらさっと韓嵩のうしろに立った。韓嵩は手を振って叩頭百
遍しながら、 「――ですから臣がお使いをうける前に、再三申しあげたではございませ....
「四つの都」より 著者:織田作之助
気な姿を見届けない内は見合いする気になれないんです。……というのは、僕は一生に一
遍しか見合いしない主義でしてね、見合いした以上、必ずその人と結婚すると決めてるん....