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遙
「遙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
遙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
に住み心地《ごこち》のいい巣を造る間に、倉地は天気さえよければ庭に出て、葉子の逍
遙《しょうよう》を楽しませるために精魂を尽くした。いつ苔香園《たいこうえん》との....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
こうばい》を取って下っていた。彼らはその突角《とっかく》まで行ってまた立停った。
遙か下の方からは、うざうざするほど繁り合った濶葉樹林《かつようじゅりん》に風の這....
「国貞えがく」より 著者:泉鏡花
紙のその状《さま》を、後《のち》に思えば鬼であろう。 台所の灯《ともしび》は、
遙《はるか》に奥山家《おくやまが》の孤家《ひとつや》の如くに点《とも》れている。....
「野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
たようだもの」 民子はさすがに女性《にょしょう》で、そういうことには僕などより
遙に神経が鋭敏になっている。さも口惜《くや》しそうな顔して、つと僕の側へ寄ってき....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
。その動乱の中を私はそろそろと自分の方へと帰って行った。目指す故郷はいつの間にか
遙に距ってしまい、そして私は屡※|蹉いたけれども、それでも動乱に動乱を重ねながら....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
降りて行った。 フランシスとその伴侶との礼拝所なるポルチウンクウラの小龕の灯が
遙か下の方に見え始める坂の突角に炬火を持った四人の教友がクララを待ち受けていた。....
「新日本の進路」より 著者:石原莞爾
本の明治維新もこの見地からすれば、自由主義革命に属する。自由主義は專制主義よりも
遙かに能率高き指導精神であつた。しかるに第一次大戰以後、敗戰國もしくは後進國にお....
「五色温泉スキー日記」より 著者:板倉勝宣
かなかうまいもんだ。うそじゃない。本人がそういっている。雪の上に立って眺めると、
遙か前面に鉢盛山がその柔かい雪の線を見せて、その後の雪は夕日にはえて種々な色を見....
「薬草取」より 著者:泉鏡花
前です。一体誰でも昔の事は、遠く隔ったように思うのですから、事柄と一所に路までも
遙に考えるのかも知れません。そうして先ず皆夢ですよ。 けれども不残事実で。 ....
「転機」より 著者:伊藤野枝
の堤防を越して行くのだということだけは分ったので、私達はその町の人家の屋根よりは
遙かに高いくらいな堤防に上がった。 やっと、のぼった私達の前に展かれた景色は、....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
言いかけて勇美子は身を返した。塀の外をちらほらと人の通るのが、小さな節穴を透して
遙に昼の影燈籠のように見えるのを、熟と瞻って、忘れたように跪居る犬を、勇美子は掌....
「トロッコ」より 著者:芥川竜之介
其処へ脱ぎ捨ててしまった。すると薄い足袋の裏へじかに小石が食いこんだが、足だけは
遙かに軽くなった。彼は左に海を感じながら、急な坂路を駈け登った。時時涙がこみ上げ....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
曲りの三股原に至り、またつとめて勇気を振い起し大願成就なさしめたまえと明神の祠を
遙拝して、末|覚束なき旅に上りぬ。路用として六円余、また東京へ着して三四ヶ月の分....
「取舵」より 著者:泉鏡花
はあらざるかと、いと凄じき気色なりき。 元来|伏木直江津間の航路の三分の一は、
遙に能登半島の庇護によりて、辛くも内海を形成れども、泊以東は全く洋々たる外海にて....
「荒蕪地」より 著者:犬田卯
川の氷が割れて冬中だまりとおしたせせらぎが、日一日とつぶやきを高め、ついにそれは
遙かに人家の方へまで淙々のひびきを伝えて来るまでになってしまった。山々の雪が解け....