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郷国
「郷国〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
郷国の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
見分けながら、女はまだ伯母の女神の姿に遇わない。弓矢を提《たずさ》えて来た弟は、
郷国《くに》の常陸には見受けない鳥獣を猟ってその珍しさに日の過ぐるのを忘れていた....
「新生」より 著者:島崎藤村
、平等を標語とするこの国には極く富んだものと極く貧しいものとが有るだけで、自分の
郷国《くに》にあるような中位《ちゅうい》で快適な生活はないのかとさえ疑った。
....
「去年」より 著者:伊藤左千夫
れど、僕から見ればよくよくやむを得ぬという事情があるでもなく、二年も三年も妻子を
郷国に置いて海外に悠遊し、旅情のさびしみなどはむしろ一種の興味としてもてあそんで....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
けれども、かの女は帰国しなくてはならない。かの女は元来、郷土的の女であって、永く
郷国の土に離れてはいられなかった。旅費も乏しくなった。逸作も日本へ帰って働かなけ....
「光の中に」より 著者:金史良
。私は寧ろあの半兵衛に向って彼女が激しい憎悪をもっていることを期待し、そして同じ
郷国から出て来た者として義憤の悦びに酔いたかった。だが私は見事に肩すかしを食わさ....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
旅から帰って、はじめて
郷国の真価値がその額面通りに買い得るというものだ。今の僕がそれである。もう、実を....
「五月の唯物観」より 著者:寺田寅彦
いてみたが、どうした由来によるものか分らなかった。ただ何となく軒端に菖蒲を葺いた
郷国の古俗を想い浮べて、何かしら東西両洋をつなぐ縁の糸のようなものを想像したので....
「西鶴と科学」より 著者:寺田寅彦
、ふる狸の清春という二人の歌比丘尼が、通りがかりの旅客を一見しただけですぐにその
郷国や職業を見抜く、シャーロック・ホールムス的の「穿ち」をも挙げておきたい。 ....
「国枝史郎氏の人物と作品」より 著者:小酒井不木
士山のように高踏的ではなくて、信州の連山のように大衆的である。そうして氏は熱烈に
郷国を愛しておられる。ことに木曾の天地を氏は最も愛好して、書く材料がない場合には....
「贋物」より 著者:葛西善蔵
か?」耕吉はふと言葉をかけた。 「青森まで」と小僧は答えた。青森というのは耕吉の
郷国だったので、彼もちょっと心ひかれて、どうした事情かと訊いてみる気になった。 ....
「サンカ者名義考」より 著者:喜田貞吉
仲間扱いにはなっていないらしい。 京都あたりではサンカという類のものを、自分の
郷国阿波などでは、オゲ或いはオゲヘンドという。尾張・三河あたりではポンとかポンス....
「人間性の深奥に立って」より 著者:小川未明
ように、小学校教師にも自己の職務を余りに職業視している人があると思う。私はある時
郷国の小学校に就て其の内幕をみるの機会を得たのであるが、其の風儀の壊廃は実に驚く....
「死児を産む」より 著者:葛西善蔵
一廻り下の同じ亥年の二十六歳の、K刑務所に服役中の青年囚徒からの手紙だった。彼の
郷国も、罪名も、刑期も書いてはなかったが、しかしとにかく十九の年からもう七年もい....
「賤民概説」より 著者:喜田貞吉
それで近江と呼ばれていたと察せられる。彼らは諸国からの落伍者の集まりで、それぞれ
郷国の名を以て呼ぶ例であった。寛元年間の清水坂と奈良坂との非人闘争に関する訴訟文....
「放免考」より 著者:喜田貞吉
。しからばその放免囚が、特別に公権停止もしくは公権剥奪の付加刑を課せられ、或いは
郷国追放の処分を受けなかった限りは、少くも彼らが以前に某地貫籍の公民であったもの....