酷薄[語句情報] » 酷薄

「酷薄〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

酷薄の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
尾生の信」より 著者:芥川竜之介
る。すると、膝《ひざ》も、腹も、胸も、恐らくは頃刻《けいこく》を出ない内に、この酷薄《こくはく》な満潮の水に隠されてしまうのに相違あるまい。いや、そう云う内にも....
」より 著者:芥川竜之介
。しかもほとんど平静を失した、烈しい幸福の微笑である。男はこの時妻の微笑に、何か酷薄《こくはく》なものさえ感じた。日の光に煙った草木《くさき》の奥に、いつも人間....
春の潮」より 著者:伊藤左千夫
はないけれど、ちょっと片意地に陥るとわが子も何もなくなる、それで通常は決して無情酷薄な父ではないのである。 おとよはだれの目にも判るほどやつれて、この幾日とい....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
、そればかりではないのです。貴方の率いている狩猟の一隊が、今日いまここで、野卑な酷薄な本性を現わしたのだ。しかし射手は確か、獲物は動けず……」 「なるほど、狩猟....
江口渙氏の事」より 著者:芥川竜之介
身不快でなければ、近代的と云う語で形容しても好い。兎に角憎む時も愛する時も、何か酷薄に近い物が必江口の感情を火照らせている。鉄が焼けるのに黒熱と云う状態がある。....
加利福尼亜の宝島」より 著者:国枝史郎
所に部屋があり、部屋には無数の土人がいた。ガヤガヤ喚きながら酒を飲んでいる。残忍酷薄な表情をした見るから恐ろしい土人どもである。 それからさらに二つ三つ大きな....
血ぬられた懐刀」より 著者:国枝史郎
だ! 虚器を擁しているばかりだ! 不平もあろう、淫蕩にもなろう、残忍にもなろう、酷薄にもなろう! しかも関白をやめさせようとする。淀君の子を立てようとする。で、....
仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
「八重、其方は強情だのう」 眼袋の出来ている尻下りの眼へ、野獣的の光を湛え、酷薄らしい薄い唇を、なめずるように舌で濡らしながら、頼母はネットリとお八重へ云っ....
善悪両面鼠小僧」より 著者:国枝史郎
よりと濁って不愉快を極め聞く人をしてゾッとさせる。いわゆる先天的犯罪面でその残忍酷薄さは一見しただけで想像される。 「無礼者!」と乃信姫はキリリと柳眉を上げたも....
血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
…蝶や蜂が不注意からだ」 と、また、彼は呟いた。 独言を云うその口は、残忍と酷薄とを現わしているかのように薄く、色も、赤味などなく、薄墨のように黒かった。 ....
剣侠」より 著者:国枝史郎
に、女が一人送られましたよ。さようさようその生地獄へ!」 こう云うと嘉門は惨忍酷薄、洵女の生血を飲み、肉を喰らったといわれている、伝説の大江山の酒顛童子、それ....
「日本民族」とは何ぞや」より 著者:喜田貞吉
いはこれを駆逐し、或いはこれを殺戮し、以てその国を奪い給うというが如き、さる残忍酷薄なる所業には出で給わなかったのである。そしてこれらの先住民族の首領と仰ぐもの....
チベット旅行記」より 著者:河口慧海
その事は確実らしい。ところでその耳は鋭く立って居りましてその顔付の獰猛にして残忍酷薄なる様子を示して居ることは一見恐るべきもので、現に旅人でも一人位であると不意....
活人形」より 著者:泉鏡花
が可い。と得三は頷きけり。虎狼や梟に取囲まれたる犠牲の、生きたる心地は無き娘も、酷薄無道のこの談話を聞きたる心はいかならむ。絶えも入るべき風情を見て、得三は叱る....
エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
御後悔遊ばさるやに拝するゆえをもって、所有するあらゆる土地を売り捨てて、陛下の御酷薄によりて受けたる心の傷を癒やすに急なること、わが貧しき領土の一部分を売りて、....