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酸鼻
「酸鼻〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
酸鼻の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
ふ》以下のものに見せるとも悔いようとはしなくなった。二人《ふたり》は、はた目には
酸鼻《さんび》だとさえ思わせるような肉欲の腐敗の末遠く、互いに淫楽《いんらく》の....
「八十八夜」より 著者:太宰治
はあるまいか。こうして、じりじり進んでいって、いるうちに、いつとはなしに自滅する
酸鼻《さんび》の谷なのではあるまいか。ああ、声あげて叫ぼうか。けれども、むざんの....
「畜犬談」より 著者:太宰治
を出したりなどしている時に、ポチの皮膚病がはじまったのである。見れば、見るほど、
酸鼻《さんび》の極である。ポチも、いまはさすがに、おのれの醜い姿を恥じている様子....
「犯人」より 著者:太宰治
、ねばっこい小豆《あずき》色の光が、樹々の梢《こずえ》を血なま臭く染める。陰惨、
酸鼻《さんび》の気配に近い。 鶴は、厠《かわや》の窓から秋のドオウンの凄《すご....
「鴎」より 著者:太宰治
、不義理な借財だけである。かみなりに家を焼かれて瓜《うり》の花。そんな古人の句の
酸鼻《さんび》が、胸に焦げつくほどわかるのだ。私は、人間の資格をさえ、剥奪《はく....
「街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
て来たので仕事を打ち切った。 この事実を逆に考えると、東京全市民が最も甚だしい
酸鼻な境界にいたのは、九月の中旬頃までと見る事が出来る。……東京市中の手まわしの....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
と淡黄色を帯びた毒瓦斯が、霧のように渦を巻いて、路上一杯に匍ってゆく。死屍累々、
酸鼻を極めた街頭が、ボッと赤く照しだされた。市民の鮮血に濡れた、アスファルト路面....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
も、あの皮肉な冷笑的な怪物は、法水を眼下に眺めているにもかかわらず、悠々と一場の
酸鼻が弓のように垂だれて、燐寸が指頭から放たれた。と、キァッという悲鳴が闇をつん....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
血の幾斗幾升が、空しく地中に吸い込まれ、その肉体がうつろにされて、地上に累々たる
酸鼻には堪えられたものでない。せめて、この、おとなしい湖畔の町だけには、もはや再....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
暗い中の一方には焚火がしてあって、その明りで見ると、光景は狼藉《ろうぜき》にして
酸鼻を極めたものと言うべきです。 男女二人をこの原まで誘《おび》き出して来て、....
「現代忍術伝」より 著者:坂口安吾
な羽根ブトンがかかっているから、 「ハテナ」 おどろいて身を起すと、落花狼藉、
酸鼻の極、目も当てられない光景である。接待係がにわか仕立ての婦人社員であるから、....
「安吾人生案内」より 著者:坂口安吾
農村はそうではないね。彼らが身にしみて知っているのは戦争中の好景気だけで、戦争の
酸鼻の相は彼らとは無関係なものだった。空襲警報もどこ吹く風、バクゲキなどはわが身....
「瘠我慢の説」より 著者:石河幹明
およそ古今の革命には必ず非常の惨毒を流すの常にして、豊臣氏の末路のごとき人をして
酸鼻に堪えざらしむるものあり。然るに幕府の始末はこれに反し、穏に政府を解散して流....
「長崎の鐘」より 著者:永井隆
、祖国の敗北。物理学者の歓喜、日本人の悲嘆。私は複雑な思いに胸をかき乱されつつ、
酸鼻《さんび》を極むる原子野を徘徊《はいかい》した。 竹槍が落ちていた。蹴った....
「澪標」より 著者:外村繁
体から肉体へのみ通じ得るような、極めて幼く、優しいものである。その優しいものが、
酸鼻の極限の下に置かれているのである。私は強烈な恐怖に襲われた。 或はその逆で....