重苦[語句情報] »
重苦
「重苦〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
重苦の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
亥《い》の上刻《じょうこく》に迫って来た。――
月はまだ上らない。見渡す限り、
重苦しいやみの中に、声もなく眠っている京《きょう》の町は、加茂川の水面《みのも》....
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
子を憎んだ。同時に又隣の女の子に乳を吸わせる叔母を憎んだ。この小事件は彼の記憶に
重苦しい嫉妬《しっと》ばかり残している。が、或はその外にも彼の Vita sex....
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
に風が出たらしい。舷《ふなべり》をうつ浪《なみ》の音が、まるで油を揺するように、
重苦しく聞えて来る。その音とともに、日覆をはためかすのは、おおかた蝙蝠《こうもり....
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
と云う訳には行かなかった。が、同時にまた不吉な予感と茫漠とした一種の責任感とが、
重苦しく私の心の上にのしかかって来るような心もちもした。私はそれらの不安な感じを....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
神)の御名《みな》を唱えた。が、悲しみは消えないばかりか、前よりは一層彼の胸へ、
重苦しい空気を拡げ出した。
「この国の風景は美しい――。」
オルガンティノは反....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
している内に彼女の眼には、いつか涙が一ぱいに漂って来る事があった。しかしふだんは
重苦しい眠が、――それ自身悪夢のような眠が、間《ま》もなく彼女の心の上へ、昏々《....
「魔術」より 著者:芥川竜之介
スラ君がその花を私の鼻の先へ持って来ると、ちょうど麝香《じゃこう》か何かのように
重苦しい※さえするのです。私はあまりの不思議さに、何度も感嘆《かんたん》の声を洩....
「沼地」より 著者:芥川竜之介
ど》るものは、どこを見ても濁った黄色《きいろ》である。まるで濡れた壁土のような、
重苦しい黄色である。この画家には草木の色が実際そう見えたのであろうか。それとも別....
「路上」より 著者:芥川竜之介
。それからその日の光に蒸されたせいか、壺にさした薔薇《ばら》の花も、前よりは一層
重苦しく、甘い※《にお》いを放っていた。最後にあの令嬢の弾《ひ》くオルガンが、ま....
「西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
する方向へ、一時に辷り出しそうな心もちもする。それがはげしい雨の音と共に、次第に
重苦しく心をおさえ始めた時、本間さんは物に脅《おびやか》されたような眼をあげて、....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
説得しようとした。しかし目《ま》のあたりに見た事実は容易にその論理を許さぬほど、
重苦しい感銘を残していた。
けれどもプラットフォオムの人々は彼の気もちとは没交....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
鉛《なまり》の板かと思うほど、波一つ揚げていなかった。周囲に聳《そび》えた山々も
重苦しい夏の緑の色が、わずかに人心地のついた彼には、ほとんど永久に癒《い》やす事....
「或る女」より 著者:有島武郎
子が姿を見せてから、食堂の空気は調子を変えていた。ことに若い人たちの間には一種の
重苦しい波動が伝わったらしく、物をいう時、彼らは知らず知らず激昂《げきこう》した....
「或る女」より 著者:有島武郎
り》を脱ぎ捨てて、ありたけの懐中物を帯の間から取り出して見ると、凝りがちな肩も、
重苦しく感じた胸もすがすがしくなって、かなり強い疲れを一時に感じながら、猫板《ね....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
を障えだしたように、夜とともに荒れ始めていた。底力のこもった鈍い空気が、音もなく
重苦しく家の外壁に肩をあてがってうんな家屋という領土がもろく小さく私の周囲になが....