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「野茨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

野茨の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
熊の出る開墾地」より 著者:佐左木俊郎
。幅三十町、長さ五十町ほどの荒れ野原《のっぱら》の一部分だった。萩と茅《かや》と野茨《のいばら》ばかりの枯《か》れ叢《くさ》の中に、寿命《じゅみょう》を尽くして....
神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
そこでは鴨が泳いでいた。渡り損なった鴨であった。鴨はひどく痩せていた。 一所に野茨の叢があった。五月が来たら花が咲こう。今は芽さえ出ていなかった。ただ穢ならし....
八ヶ嶽の魔神」より 著者:国枝史郎
た。 その日彼は山手の方へ的もなくブラブラ歩いて行った。茂みで鳥が啼いていた。野茨の赤い実が珠をつづり草の間では虫が鳴いていた。ひどく気持ちのよい日和であった....
貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
て、木の根、岩角、雑草が人の脊より高く生乱れ、どくだみの香深く、薊が凄じく咲き、野茨の花の白いのも、時ならぬ黄昏の仄明るさに、人の目を迷わして、行手を遮る趣があ....
古狢」より 著者:泉鏡花
を白く抜いた友染である。径に、ちらちらと、この友染が、小提灯で、川風が水に添い、野茨、卯の花。且つちり乱るる、山裾の草にほのめいた時は、向瀬の流れも、低い磧の撫....
小春の狐」より 著者:泉鏡花
―」 まったくどうものんびりとしたものだ。私は何かの道中記の挿絵に、土手の薄に野茨の実がこぼれた中に、折敷に栗を塩尻に積んで三つばかり。細竹に筒をさして、四も....
死者の書」より 著者:折口信夫
て、疾くに、七日は過ぎ、十日・半月になった。山も、野も、春のけしきが整うて居た。野茨の花のようだった小桜が散り過ぎて、其に次ぐ山桜が、谷から峰かけて、断続しなが....
星女郎」より 著者:泉鏡花
驚しそうな人々が住んでいよう。 朝夕の糧を兼ねた生垣の、人丈に近い茗荷の葉に、野茨が白くちらちら交って、犬が前脚で届きそうな屋根の下には、羽目へ掛けて小枝も払....
生死卍巴」より 著者:国枝史郎
大小、あられ小紋の手甲に脚絆、――旅装いは尋常であった。 峠の路は歩きにくい、野茨が野袴の裾を引いたり、崖から落ちて来る泉の水が、峠の道に溢れ出て、膝に浸くま....
大正女流俳句の近代的特色」より 著者:杉田久女
たりて舅不興 久女 貧しき群におちし心や百合に恥づ 同 貧しき家をめぐる野茨の月尊と 同 田舎の旧家の複雑した家庭。境遇の矛盾。ノラともなりえず、....
十二神貝十郎手柄話」より 著者:国枝史郎
波が崩れて飛沫を上げた。と、そこから笑い声が起こった。 帆船が遠くの海の上を、野茨のように白く蠢いていれば、浜の背後を劃している、松林が風で揺れてもいた。海は....
血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
と呼ぶ、凄愴の声が聞こえて来た。 頼母のいる位置から、十数間離れた、胡頽子と野茨との叢の横に、戸板が置いてあり、そこから、お浦が、獣のように這いながら、頼母....
取返し物語」より 著者:岡本かの子
) 舞台半転 (源右衛門宅の裏の浜辺。源右衛門の家の背戸は、葉の落ちた野茨、合歓木、うつぎなどの枝木で殆んど覆われている。家の腰を覆うて枯蘆もぼうぼう....
レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
らぬ領主の君。(間)さても白いお前の肌(と女をしげしげと眺め)ローマの朝の白露が野茨の花へ降ったようだ。鴻の鳥の胸毛のようだ。建国の第一の朝に、汚れを知らぬ谷の....
宇賀長者物語」より 著者:田中貢太郎
してみると、庭には薄月が射しておりました。 壮い男は海岸を西へ西へ往きました。野茨の藪があったり、人の背丈よりも高い荻の生えたところがあったりしました。荻の大....