鉄兜[語句情報] »
鉄兜
「鉄兜〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鉄兜の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「さようなら」より 著者:田中英光
優越感や軽蔑、憎悪の本能感情が強かった。次の朝、更に岡田は故意でもあるかのように
鉄兜と巻脚絆をどこかに棄てていた。 髭ッ面の分隊長は、「気合いを入れてやる」と....
「柿色の紙風船」より 著者:海野十三
頭には賑かに凧や羽根がぶら下り、セルロイドのラッパだの、サーベルだの、紙で拵えた
鉄兜だの、それからそれへと、さまざまなものが所も狭く、天井から下っていた。――私....
「河明り」より 著者:岡本かの子
だ底冷えが残っている。河には船が相変らず頻繁に通り、向河岸の稲荷の社には、玩具の
鉄兜を冠った可愛ゆい子供たちが戦ごっこをしている。 その後の経過を述べるとこう....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
と日本の刀剣とで固めた護衛の武士の風俗ばかりでなく、軍帽、烏帽子、陣笠、あるいは
鉄兜なぞ、かぶり物だけでも新旧時代の入れまじったところは、さながら虹のごとき色さ....
「死のなかの風景」より 著者:原民喜
窓の覆《おお》いを下げるもの、立上って扉のところから外を覗《のぞ》くもの、急いで
鉄兜《てつかぶと》を被《かぶ》るもの……彼はしーんとした空気のなかに、ぼんやり坐....
「壊滅の序曲」より 著者:原民喜
たりして、人々はただそわそわしていた。……正三が事務室へ這入《はい》って行くと、
鉄兜《てつかぶと》を被った上田の顔と出逢《であ》った。 「とうとう、やって来まし....
「廃墟から」より 著者:原民喜
跡ながら、夥《おびただ》しいガラス壜《びん》が気味悪く残っている処《ところ》や、
鉄兜《てつかぶと》ばかりが一ところに吹寄せられている処もあった。 私はぼんやり....
「日本イデオロギー論」より 著者:戸坂潤
時、初めて其意味の具体性が判って来る。この種の一連の現象に較べるならば、建国祭に
鉄兜の子供の行列があったり、鎌倉仏教の復興が叫ばれたり、女学校の英語が廃止になり....
「現代日本の思想対立」より 著者:戸坂潤
単に全く児戯的な意義しか持たなくなって行く。その好い例は建国祭などで、今後は全く
鉄兜の小学生や鉄砲を担いだ私立大学の学生や、女給や講談師等によって賑々しく行なわ....
「ヴェルダン」より 著者:野上豊一郎
二段に組み立てられ、兵士が靴を穿いて外套を被たまま身体を横たえ、銃剣といっしょに
鉄兜やガス・マスクを枕もとに置いている。その時の事を案内者の老兵士が私たちを導い....
「だいこん」より 著者:久生十蘭
キ色のコンビネーションに茶革の短いスパッツをつけ、蒼黒く光る自動小銃を肩に掛けた
鉄兜の兵隊が十人ほど乗っている。表情もタイプもふしぎなほどよく似ている。首筋が蘇....
「墓地展望亭」より 著者:久生十蘭
る霧の面※《ヤシマク》をつけ、一種、陰険なようすで、佇んでいた。 跨橋の上を、
鉄兜をつけた一隊の兵士が行進し、そのあとに、砲車の弾薬車がつづいた。昇降場に向い....
「昭和遊撃隊」より 著者:平田晋策
が、豪胆なことは天下第一の勇将である。 塹壕《ざんごう》の中で、腕ぐみをして、
鉄兜《てつかぶと》のひさしの下の眼を、じっとつぶっている。 中将の胸の中には、....
「長崎の鐘」より 著者:永井隆
したまま突っ立って、じいっと空をにらみつづけていた。小柄ながら肝のすわった男で、
鉄兜から黒巻脚絆のきりりとしまった脚の先まで隙もない厳重な身固め、これまで何回と....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
たりの山を寄せ付けまいと威嚇している。立山と奥大日との間から黒岳が銀の筋金打った
鉄兜の鉢を朝日に輝かして、黒部川の奥に覇を唱えている。蓮華岳の悠たりした線が終る....