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鉛色
「鉛色〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
鉛色の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「将軍」より 著者:芥川竜之介
ら。」
もう一人の支那人、――鴉片《あへん》の中毒に罹《かか》っているらしい、
鉛色の皮膚《ひふ》をした男は、少しも怯《ひる》まずに返答した。
「しかしお前たち....
「槍が岳に登った記」より 著者:芥川竜之介
は熱と光との暗影をもった、溶けそうな白い雲が銅をみがいたように輝いて、紫がかった
鉛色の陰を、山のすぐれて高い頂にはわせている。山に囲まれた細長い渓谷は石で一面に....
「或る女」より 著者:有島武郎
そのままソファの上にぶっ倒れた。目のまわりに薄黒い暈《かさ》のできたその顔は鈍い
鉛色をして、瞳孔《どうこう》は光に対して調節の力を失っていた。軽く開いたままの口....
「二つの道」より 著者:有島武郎
行き渡るやいなや、人の努力は影を潜めて、行く手に輝く希望の光は鈍ってくる。そして
鉛色の野の果てからは、腐肥をあさる卑しい鳥の羽音が聞こえてくる。この時人が精力を....
「三つのなぜ」より 著者:芥川竜之介
ろぼろのズボンの膝をかかえながら、いつも猿を眺めてはもの凄い微笑を浮かべていた。
鉛色の顔をしかめたまま、憂鬱に空を見上げた猿を。....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
日 ◯昨二十五日、果して米軍機、監視飛行を始める。台風気味の低雲をついて、全身を
鉛色に塗ったグラマン、二機以上の編隊でしきりに飛ぶ。子供はよろこぶ。 ◯天候のた....
「死の快走船」より 著者:大阪圭吉
私達は、驚いて窓の硝子扉を、力一杯押し開けた。 と――今までの灰色の、或は
鉛色の、身を刺すような痛々しい海の色は、いつの間にか消え去って、陰鬱な曇天の下に....
「とむらい機関車」より 著者:大阪圭吉
径八、九寸近くもある、まるで丸太ン棒です。おまけにその皮膚の色は、血の気が失せて
鉛色なんです。助役は青い顔をして屈み込むと、でも、平気でその肌へ指をグッと押付け....
「動かぬ鯨群」より 著者:大阪圭吉
五 北太平洋の朝ぼらけは、晴れとも曇りとも判らぬ空の下に、
鉛色の海を果てしもなく霞ませて、ほのぼのと匂やかだった。 昨夜根室を出た監視船....
「寒の夜晴れ」より 著者:大阪圭吉
たように舞い下った。 さて、十二月二十四日のその晩は、朝からどんより曇っていた
鉛色の空が夕方になって崩れると、チラチラと白いものが降りはじめた。最初は降るとも....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
いで、復一が起き上れたのは、明け方近くだった。 雨は止んで空の雲行は早かった。
鉛色の谷窪の天地に木々は濡れ傘のように重く搾まって、白い雫をふしだらに垂らしてい....
「少年探偵長」より 著者:海野十三
す。首領はカンカンにおこってますぜ」 首領――と、きくと、机博士の顔色はさっと
鉛色になった。 「いやあ……別に……ちょ、ちょっと悪戯をしてみただけさ」 「なん....
「荘子」より 著者:岡本かの子
がっちりした体に大ぶ古くなった袍を着て、樺の皮の冠を無雑作に冠って居た。 顔は
鉛色を帯びて艶が無く、切れの鋭い眼には思索に疲れたものに有勝ちなうるんだ瞳をして....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
ます」 と訊いた。良人は 「あの時、珪次君がじーッと眼を据えて、唇を噛み、顔が
鉛色にでもなるようだったら、監視も要し兼ねないでしょうが、ああいう風に即座にタッ....
「がん」より 著者:小川未明
がんにとって、この山中の湖は彼のしかばねを葬るところとなりました。まだ、湖の上が
鉛色に明けきらぬ、寒い朝、彼は、ついに首垂れたまま自然との闘争の一|生を終わるこ....